メルセデス・ベンツ・W210

メルセデス・ベンツ W210/S210型 Eクラス：安全と快適性を両立した名車

メルセデス・ベンツ W210/S210型は、1995年から2002年にかけて販売された2代目Eクラスセダンおよびステーションワゴンです。10年間販売されたW124の後継モデルとして登場し、その洗練されたデザインと革新的な技術で高い人気を博しました。

特徴的なデザインと先進技術

W210/S210型Eクラスの最大の特徴は、なんと言っても楕円形の4灯式ヘッドライトです。この斬新なデザインは、それまでのメルセデス・ベンツのイメージを一新し、時代の流れを反映したスタイリッシュな印象を与えました。

技術面においても、W210/S210型は多くの進化を遂げています。まず、サスペンションは、W124型のストラット式からダブルウィッシュボーン式に変更され、操縦安定性が向上しました。さらに、ステアリングシステムもボール＆ナット式からラック＆ピニオン式に変更され、より正確で軽快なハンドリングを実現しました。

安全性能に関しても、大きな進歩が見られました。世界で初めてドア内蔵式のサイドエアバッグを採用し、乗員の安全性を大幅に向上させました。また、ASR（トラクションコントロールシステム）やESP（電子制御スタビリティプログラム）も設定され、あらゆる状況下での安全走行をサポートしました。

充実の快適装備と広々とした室内空間

W210/S210型Eクラスは、安全性能だけでなく、快適性にも重点が置かれていました。室内空間は先代モデルに比べて大幅に拡大され、特に後席の居住性が向上しました。クーラーボックス機能付きコンソールボックスやフルオートエアコン（後席エアコン吹出口付き）といった快適装備も充実しており、長時間のドライブでも快適に過ごせるよう配慮されています。モデルライフの途中からは、CD-ROMナビゲーションシステムや自動防眩ミラーも標準装備化され、さらに快適性が向上しました。

一方で、従来のメルセデス・ベンツが特徴としていた「誰が乗っても戸惑わない確実さ」という実用性の高さは、一部簡略化された構成部品やコストダウンされた内装の質感によって、若干低下したと言われています。特に、革の材質などは以前のモデルと比較して質感が劣るという意見も見られました。しかし、マイナーチェンジ後には品質改善がなされ、これらの点は改善されたとされています。

日本市場とモデルバリエーション

日本市場では、1995年8月にE230とE320が導入されました。その後、アバンギャルドモデルやステーションワゴン、V型8気筒エンジンを搭載したE400（日本仕様ではE420から名称変更）などが追加されました。E230は後にE240へとモデルチェンジし、E320もV型6気筒エンジンへと変更されました。また、フルタイム4WDシステムである「4MATIC」も設定されました。さらに、高性能モデルであるE55 AMGも追加されました。

W210/S210型Eクラスは、その優れた安全性、快適性、そして洗練されたデザインによって、メルセデス・ベンツの歴史において重要なモデルとなりました。また、このモデルのプラットフォームは、後にクライスラー300Cなどに採用されるクライスラーLXプラットフォームのベースにもなっている点も特筆に値します。このプラットフォームはW210のプラットフォームをベースに、燃料タンクの位置変更など、大幅な改良が加えられました。

モデルライフを通しての進化

W210/S210型Eクラスは、発売後も継続的に改良が加えられました。1999年のマイナーチェンジでは、エクステリアデザインを中心に変更が施され、インテリアの改良も約1,800箇所に及びました。フロントマスクやテールランプのデザイン変更に加え、ウィンカー内蔵ドアミラーが採用されるなど、デザイン面での刷新が行われました。また、ナビゲーションシステムの更新やESPの全車標準装備化なども行われました。2000年にはE240の排気量が拡大され、2001年には高性能モデルであるE55 AMGや、AMGパーツを標準装備したスポーツライン仕様が追加されました。これらの改良によって、W210/S210型Eクラスは、常に時代のニーズに対応したモデルであり続けました。

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