メルセデス・ベンツ・W211

メルセデス・ベンツ 3代目Eクラス (W211/S211型): エレガンスとトラブルの歴史

2002年から2009年にかけて販売されたメルセデス・ベンツ3代目Eクラス(W211/S211型)は、セダンとステーションワゴンで構成されるモデルラインアップです。洗練されたデザインと先進技術を備えながらも、いくつかの技術的問題を抱えていたことで知られています。本稿では、このモデルの様々な側面について詳しく解説します。

デザインとボディ

先代モデルのデザインを踏襲しつつ、よりモダンでエレガントなスタイルへと進化を遂げました。特徴的なのは、大胆に傾斜した楕円形の4灯式ヘッドライトです。後期型ではフロントグリルを中心にスポーティーな印象が強まりました。ボディサイズは先代モデルと比較して拡大され、全幅と全高がそれぞれ20mm増加したことで、一部の立体[駐車場]]では駐車が困難になりました。空気抵抗係数Cd値は0.26と、優れた空力性能を誇ります。[[ステーションワゴン]では、荷物の積載時の姿勢変化を抑えるため、後輪にエアサスペンションによるセルフレベリング機構が採用されています。また、7人乗りモデルも設定されていました。

エンジンとトランスミッション

エンジンはセダンとステーションワゴンでほぼ共通です。しかし、生産期間中、排気量やSOHC/DOHC、トランスミッション（5速ATから7速ATへの変更）など、基本的な要素が頻繁に変更されています。日本市場では、高級車イメージを強調するため、E250以上のグレードが中心でした。北米市場では、E200コンプレッサーやE220CDIなどの廉価版も設定され、より大衆向けに販売されました。

グレードと装備

日本市場では、主に「エレガンス」と「アバンギャルド」のグレードが設定されていました。アバンギャルドは、黒系の木目調の内装と革張りが特徴でした。マイナーチェンジを経て、アバンギャルドSへと進化し、その後一部グレードでアバンギャルドが復活しています。欧州市場では、内装や装備を簡素化した「クラシック」グレードも存在しましたが、日本市場には導入されませんでした。上級モデルには、AMGエアロパーツが装備されました。

先進装備とトラブル

このモデルでは、SBC (Sensotronic Brake Control) と呼ばれる電子制御ブレーキシステムが搭載されました。雨天時などにディスクとブレーキパッドをわずかに接触させて水分を除去する機能や、アクセルペダルから足を離すとブレーキに備えて間隔を狭める機能を備えていました。しかし、このシステムは接触不良やノイズの影響で、パワーアシストが停止してしまう問題が多発しました。日本でも大規模なリコールが行われ、最終的にはマイナーチェンジでSBCシステムは廃止されました。

さらに、多くの電気機器の駆動にCAN通信システムが採用されましたが、これに伴うSAMシステムなどの障害も発生しました。これらのトラブルにより、信頼性に疑問符がつき、販売にも影響が出ました。特に、HDDナビゲーションシステムやiPodなどの外部入力への対応が遅れたことも、ユーザーからの不満につながりました。

販売と盗難率

日本国内での価格は、約700万円から1400万円と高額でした。北米市場では、5万1000ドルから8万6000ドル(当時のレートで約612万円から1032万円)と、日本より比較的安価に設定されました。度重なるトラブルにもかかわらず、2008年には米国道路安全保険協会から「盗難率の低い車リスト」に掲載されました。しかし、販売台数は同クラスのライバル車に比べて伸び悩みました。

パリ-北京ラリー

2006年には、新型モデルの発売プロモーションとして、Eクラスによるパリ-北京間13,600kmのラリーが開催されました。33台のE320 CDIとE320 CDI 4MATICが参加し、約1ヶ月かけて走破しました。

まとめ

W211/S211型Eクラスは、洗練されたデザインと先進技術が魅力でしたが、SBCシステムを中心とした信頼性の問題が大きな課題でした。これらの経験は、メルセデス・ベンツの今後の開発に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

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