メルセデス・MGP W02

メルセデス・AMG MGP W02：2011年シーズンの挑戦

2011年のF1世界選手権を戦ったメルセデスGPのMGP W02は、数々の技術的挑戦と進化を遂げたマシンとして知られています。開発段階から幾多の困難を乗り越え、シーズンを通してそのポテンシャルを追求し続けました。

開発と設計

2011年2月、バレンシア・サーキットにて発表とシェイクダウンが行われたMGP W02ですが、発表に先駆けて画像が流出するというハプニングに見舞われました。設計コンセプトはショートホイールベース。これは、マシンの旋回性を高めることを目指したものです。空力特性の最適化を追求し、ハイノーズは先端が高く、極薄で偏平な形状に設計されました。また、レギュレーションの変更に対応するため、インダクションポッドは従来型へと回帰しました。一方、他チームはメルセデス方式を模倣するなど、MGP W02は技術トレンドを牽引する存在でもありました。

リアサスペンションには、プルロッド式を採用。これは、タイヤへの荷重伝達効率を高め、トラクション性能を向上させることを狙ったものです。排気システムは、初期段階ではサイドポッド中央に排気口を設けていましたが、後にレッドブル方式に倣い、リアタイヤの内側に排気を吹きつけるブロウンディフューザーに変更されました。この変更は、ダウンフォースの増強に大きく貢献したと考えられます。

MGP W02には、メルセデス・ベンツ・ハイパフォーマンス・エンジンズ製のKERSが搭載されています。これは、マクラーレンやフォース・インディアなど、メルセデスユーザーチームにも供給された、同社が開発した先進技術の結晶でした。ウィンターテストではオーバーヒートの問題が発生し、サイドポッドにルーバーが追加されるなど、信頼性向上のための改良が加えられました。シーズン中盤には、インダクションポッドにインテークが追加されるなど、細かな改良が重ねられました。

2011年シーズンの戦い

2011年シーズン、メルセデスGPはコンストラクターズランキングで4位を獲得しましたが、レッドブル、マクラーレン、フェラーリといったトップチームには届きませんでした。ワークス復帰2年目ながら優勝、表彰台獲得とは無縁のシーズンとなりました。しかし、MGP W02は直線でのトップスピードに優れ、特にモンツァのような高速サーキットでは、DRSを使用するマクラーレンをも凌駕する速さを見せつけました。しかし、一方ではリアタイヤの摩耗が激しく、スティント後半のペース低下が課題として残りました。また、ロズベルグは中国GPとベルギーGPで首位を走行する場面もありましたが、燃費問題により順位を落とす場面もありました。

シーズン終盤には、将来を見据えたテストが行われました。その中には、車速によって作動するパッシブタイプのFダクト（Wダクト）のテストや、ブロウンディフューザー禁止に備えたエキゾーストシステムのテストが含まれていました。これらのテストは、メルセデスGPが常に技術革新を目指していたことを示すものです。

スペック

以下に、MGP W02の主要なスペックを示します。

シャーシ:

シャーシ名：MGP W02
シャーシ構造：カーボンファイバー/ハニカムコンポジット複合構造
全長：4,800 mm
全幅：1,800 mm
全高：950 mm
サスペンション：前後プッシュロッド式
タイヤ：ピレリ
ギアボックス：7速セミオートマチック
重量：620 kg (冷却水、潤滑油、ドライバーを含む)

エンジン:

エンジン名：メルセデス・ベンツ FO108Y
気筒数・角度：V型8気筒・90度
排気量：2,400 cc
最高回転数：18,000 rpm
バルブ数：32
* 重量：95 kg

MGP W02は、メルセデスGPにとって大きな学びとなったマシンと言えるでしょう。その開発過程とシーズン中のパフォーマンスから、技術革新への飽くなき追求と、常にトップを目指した姿勢が見て取れます。

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