メルセデスAMG・F1 W11 EQ Performance

メルセデスAMG F1 W11 EQ Performance：2020年シーズンの覇者

2020年のF1世界選手権で圧倒的な強さを誇ったメルセデスAMG F1 W11 EQ Performance（以下、W11）。このマシンは、メルセデスチームの技術力の粋を集め、数々の革新的な技術を搭載し、シーズンを制覇しました。本稿では、W11の開発からシーズン中の活躍、そしてその技術的な詳細までを掘り下げて解説します。

開発と革新的な技術

W11は、2020年2月、従来のシルバーを基調としたカラーリングに、新規スポンサーであるイネオスのロゴが赤くあしらわれたデザインで発表されました。発表に先駆け公開されたカラーリング動画は大きな話題を呼びました。 発表後すぐにシルバーストン・サーキットでシェイクダウンが行われ、テクニカルディレクターのジェイムズ・アリソンは、前年モデルの弱点であった冷却システムの改善に加え、フロント、中央部、リアとあらゆる部分で大胆な設計変更を行ったと説明しました。特にリアサスペンションのレイアウトは、ディフューザーとの干渉を避けるため、アームを上方に持ち上げた前例のない設計で、空力性能の向上に大きく貢献しました。

プレシーズンテストでは、ステアリングに新たな軸を追加したDAS（Dual Axis Steering）システムが搭載され、大きな話題となりました。これはステアリングホイールを前後させることでトーアングルを調整できるシステムで、他チームからはその合法性が疑問視されましたが、FIAによって合法と認められました。しかし、このシステムは2020年シーズン限りで使用が禁止されました。

その後、アメリカで起きた黒人男性に対する警官の暴力事件に端を発した抗議運動を受け、ルイス・ハミルトンが運動を支持。チームも追従し、マシンとドライバーのレーシングスーツは黒を基調としたカラーリングに変更されました。黒の採用は、熱問題への影響が懸念されましたが、チームはマシンの断熱材の効果によりパフォーマンスへの影響はないと発表しました。しかし、レーシングスーツについては、暑さ対策の課題が残されたようです。

2020年シーズンの戦績

ドライバーは、ルイス・ハミルトンとバルテリ・ボッタスのコンビが継続されました。プレシーズンテストでは、DASシステムや高い戦闘力を見せつけ、タイトル争いの最右翼であることを改めてアピールしました。しかし、シーズン序盤は信頼性の問題、特にパワーユニット（PU）関連のトラブルが散見されました。開幕戦オーストリアGPでは、ボッタスがポールポジションを獲得しながらも、決勝で2台ともギアボックスにトラブルが発生。なんとかボッタスの優勝で幕を閉じましたが、ダブルリタイアも危ぶまれる状況でした。しかし、第2戦以降は信頼性の問題を克服し、圧倒的な強さでシーズンを制圧しました。
ハミルトンは、第4戦では3輪走行状態になりながらも優勝、第5戦ではタイヤ戦略に苦戦しながらも予選トップと、その速さは折り紙つきでした。最終的に、ハミルトンがドライバーズチャンピオンシップ、メルセデスがコンストラクターズチャンピオンシップを獲得。W11は、ハミルトン自身からも「メルセデスの最高傑作」と称えられるほど、高いパフォーマンスを見せつけました。

スペック詳細

シャシー

名称: メルセデスAMG F1 W11 EQ Performance
モノコック: カーボンファイバー/ハニカムコンポジット複合構造
ボディワーク: カーボンファイバーコンポジット
サスペンション: フロント: ダブルウィッシュボーン、リア: ダブルウィッシュボーン（独自のレイアウト）
ホイール: O・Z製マグネシウムホイール
タイヤ: ピレリ
ブレーキ: カーボンディスク、ブレンボキャリパー
ステアリング: パワーアシスト ラック・アンド・ピニオン

パワーユニット（メルセデスAMG F1 M11 EQ Performance）

型式: メルセデスAMG F1 M11 EQ Performance
内燃機関: 1.6L V6ターボ
ERS: MGU-K、MGU-H、エネルギーストア（リチウムイオンバッテリー）
燃料: ペトロナス Primax
* 潤滑油: ペトロナス Syntium

W11は、空力、サスペンション、パワーユニットとあらゆる面で高いレベルに到達したマシンでした。その圧倒的な速さと信頼性は、2020年シーズンのF1を席巻し、メルセデスの黄金時代を象徴する一台となりました。

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