メルドニウム

メルドニウム：効果とドーピング問題

メルドニウム（Meldonium）は、特に狭心症の治療薬として知られ、リトアニアやロシアで広く使用されています。この薬は、ラトビアのGrindeks社によって製造されていますが、アメリカ食品医薬品局（FDA）や日本の厚生労働省からは承認を受けていないため、日本国内では販売されていません。2018年時点では、国内での使用は認められていない状況です。

薬理作用

メルドニウムは主に一酸化窒素を媒介とした動脈拡張作用を示します。この特性により、血流が改善され、心臓の負担が軽減されるため、狭心症の治療に効果があるとされています。また、カルニチンの合成を阻害することで、脂肪酸の酸化を抑え、効率的なエネルギーの生成を促進します。これによって、体内のエネルギーバランスが改善され、疲労感の軽減にも寄与する可能性があります。

また、メルドニウムは男性ホルモン（テストステロン）のエストロゲンへの変換を妨げるため、体内のテストステロン濃度を高める効果があります。この特性が注目される一因として、アスリートによるパフォーマンス向上を目的とした使用が見られることがあります。

ドーピング問題

2015年に開催されたヨーロッパ競技大会では、多くの選手がメルドニウムを使用していたことが明らかになりました。参加選手662人の尿検体762件のうち、約8.7%にあたる66件が陽性反応を示しました。この結果、15の種目において出場選手および優勝者の中に、メルドニウムを摂取していた者がいることが確認されました。結果として、世界アンチ・ドーピング機関（WADA）は、メルドニウムを2015年に監視プログラムに加え、2016年から禁止物質リストに掲載しました。

WADAは、選択的アンドロゲン受容体修飾薬の中で、過去にインスリン以外の物質を禁止対象にしていなかったが、メルドニウムを含む薬剤も禁止物質として位置づけられることとなりました。また、WADAは薬物が体内から消失するまで数週間から数ヶ月かかることを示唆し、2016年3月1日以前の検査に関しては、1マイクログラム/ミリリットル未満のメルドニウムを許容するガイドラインを定めました。

このように、メルドニウムは医学的な使用だけではなく、アスリートによる不正使用が問題視される存在となりました。特に、著名なテニス選手マリア・シャラポワがドーピング違反で出場停止を受けた際、その原因物質としてクローズアップされ、メルドニウムの使用が大きな話題を呼びました。

まとめ

メルドニウムは、狭心症の治療に利用される薬剤ですが、ドーピングの観点からも近年問題視されており、選手たちの競技倫理に影響を与える要因ともなっています。今後の状況について、医療の分野とスポーツの分野の双方での動向が注目されます。

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