メルバーン子爵

メルバーン子爵位：イギリス貴族の歴史と系譜

メルバーン子爵位は、かつて存在したイギリスのアイルランド貴族の爵位です。時に「メルボーン子爵」とも表記されます。その歴史は、1781年にサー・ペニストン・ラムが叙位されたことに始まります。この爵位は、ラム家という名門貴族の栄光と没落を物語る、興味深い歴史を秘めています。

ラム家の台頭とメルバーン子爵位の創設

メルバーン子爵家の礎を築いたのは、マシュー・ラム（1705-1768）です。彼はイギリスの庶民院議員を務めた後、1755年に準男爵の称号を授かりました。その後、ジョン・コークが建設したメルバーン・ホールを相続することになります。彼の息子、ペニストン・ラム（1748-1829）は、父の後を継いで準男爵位を相続し、政治家として活躍しました。ペニストンは1770年、アイルランド貴族としてメルバーン男爵に叙せられ、さらに1781年にはメルバーン子爵に昇叙されました。その後、1815年には連合王国貴族爵位のダービー州メルバーンのメルバーン男爵にも叙せられ、子爵家の当主は貴族院議員の地位を得ることとなりました。初代子爵ペニストンの長男は若くして亡くなったため、次男のウィリアムが爵位を継承しました。

2代子爵ウィリアムと首相時代

2代メルバーン子爵ウィリアム・ラム（1779-1848）は、ホイッグ党の政治家として活躍しました。彼はカニング内閣やグレイ内閣で要職を務め、1834年と1835年には首相の座に就きました。首相在任中は、死刑適用範囲の縮小、地方行政改革、救貧法の改正など、数々の重要な政策を推進しました。彼の功績を称え、オーストラリアのメルボルン市は彼にちなんで名付けられました。しかし、彼にも息子が早く亡くなったため、爵位は三男のフレデリックが継承することとなります。

3代子爵フレデリックと爵位の断絶

3代メルバーン子爵フレデリック・ラム（1782-1853）は、外交官として活躍し、バイエルン、ポルトガル、オーストリアなどの各国で大使を務めました。彼は1839年には、ボーヴェイル男爵にも叙せられました。しかし、フレデリックにも息子がいませんでした。初代子爵の四男であるジョージも子宝に恵まれず亡くなっていたため、1853年にフレデリックの死をもって、メルバーン子爵位は断絶することとなりました。

メルバーン子爵家の遺産

メルバーン子爵家は、イギリスの歴史に重要な足跡を残しました。2代子爵ウィリアムの首相在任期間は短期間ではありましたが、彼の政策はイギリス社会に大きな影響を与えました。また、オーストラリアのメルボルン市は、彼にちなんで名付けられた地名として、メルバーン子爵家の名を後世に伝えています。彼らの邸宅であったダービーシャーのメルボーン・ホールは、この名門貴族家の栄華を偲ばせる歴史的建造物として、かつて存在していました。 ラム家、そしてメルバーン子爵家の歴史は、イギリス貴族社会の変遷を理解する上で重要な事例と言えるでしょう。

系譜一覧

(ブロケット・ホールの)ラム準男爵 (1755年創設)
初代：サー・マシュー・ラム (1705-1768)
2代：サー・ペニストン・ラム (1748-1829)
メルバーン男爵 (1770年創設)
初代：ペニストン・ラム (1748-1829)
メルバーン子爵 (1781年創設)
初代：ペニストン・ラム (1748-1829)
2代：ウィリアム・ラム (1779-1848)
3代：フレデリック・ラム (1782-1853)
ボーヴェイル男爵 (1839年創設)
* 初代：フレデリック・ラム (1782-1853) (1848年メルバーン子爵を相続)

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