メロス弦楽四重奏団

メロス弦楽四重奏団（Melos Quartett）

メロス弦楽四重奏団は、ドイツを代表する優れた弦楽四重奏団の一つです。1965年に、当時のヴュルテンベルク室内管弦楽団とシュトゥットガルト室内管弦楽団の首席奏者たちによって設立されました。そのキャリアの初期において、彼らはすぐに国際的な注目を集めます。特に結成翌年の1966年には、権威あるジュネーヴ国際音楽コンクール弦楽四重奏部門で最高賞を獲得し、その実力を広く知らしめました。

彼らの活動期間は長く、およそ40年に及びましたが、2005年に第一ヴァイオリン奏者のヴィルヘルム・メルヒャーが死去したことにより、惜しまれつつ解散しました。なお、この四重奏団は、イギリスを拠点に活動していた室内楽アンサンブルである「メロス・アンサンブル（Melos Ensemble）」とは全く別の団体です。

「メロス」という印象的な名称の由来は、創設メンバーである第1ヴァイオリンのヴィルヘルム・メルヒャー（Melcher）の苗字から取られた「Mel」と、第2ヴァイオリンのゲルハルト・フォス（Voss）とヴィオラのヘルマン・フォス（Voss）というフォス兄弟の苗字から取られた「os」を組み合わせた造語であると言われています。さらに、この名称はラテン語で「歌」「音色」「旋律」といった意味を持つ「melos」にも掛けられており、彼らの音楽への深い志向が込められています。

彼らの演奏スタイルは、ドイツの弦楽四重奏団らしい、しっかりとした響きと重厚さが際立っていました。レパートリーの中心は古典派からロマン派にかけての作品であり、特にルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン、フェリックス・メンデルスゾーン、フランツ・シューベルト、ロベルト・シューマン、ヨハネス・ブラームスといった作曲家の作品を得意としていました。これらの作曲家の弦楽四重奏曲全集の録音も積極的に行い、中でもベートーヴェンの四重奏曲全集は高い評価を受けています。彼らはこうした伝統的なレパートリーに特化しており、同時代に活躍したアルバン・ベルク弦楽四重奏団が現代音楽も積極的に演奏したのとは対照的に、現代音楽を演奏することは一切ありませんでした。

主要なメンバーは以下の通りです。

第1ヴァイオリン: ヴィルヘルム・メルヒャー（Wilhelm Melcher）
第2ヴァイオリン:
ゲルハルト・フォス（Gerhard Voss） - 1993年まで
イーダ・ビーラー（Ida Bieler） - 1993年から
ヴィオラ: ヘルマン・フォス（Hermann Voss）
チェロ: ペーター・ブック（Peter Buck）

彼らの残した録音は現在も聴き継がれており、ドイツの弦楽四重奏の伝統を示す重要な遺産となっています。

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