モスクワ地下鉄

モスクワ地下鉄：華麗なる地下宮殿

モスクワ地下鉄（ロシア語: Московское метро）は、ロシアの首都モスクワとその周辺地域を走る地下鉄です。正式名称は「モスクワ地下鉄公社」で、その運営はモスクワメトロ公社によって行われています。1935年に最初の路線が開業して以来、モスクワ市民の足として、またその豪華な内装から「地下宮殿」として世界的に知られています。

基本情報

モスクワ地下鉄は、2023年現在、15路線（うち2路線は統合予定）で構成されており、総延長は397.3kmに及びます。230の駅があり、そのうち48駅は文化遺産、40駅以上がランドマークとされています。年間輸送人員は世界でも上位にランクインするほど多く、東京の地下鉄に次ぐ利用客数を誇ります。路線は放射状と環状線で構成されており、モスクワ中心部へのアクセスを容易にしています。

特徴

地下宮殿

モスクワ地下鉄の最大の特徴は、その豪華な装飾です。多くの駅は、社会主義リアリズム様式に沿ったモザイク画、彫刻、シャンデリアなどで飾られ、まるで美術館や宮殿のような雰囲気を醸し出しています。特に初期に建設された駅には、その豪華さが顕著に見られます。

案内放送

放射状の路線では、都心に向かう際は男性の声、都心から離れる際は女性の声で案内放送が流れます。環状線では、右回りが男性の声、左回りが女性の声となっています。

地上区間

大部分の駅は地下にありますが、フィリョーフスカヤ線には長い地上区間があります。また、ブートフスカヤ線は3分の2が地表を走っています。地上区間では、モスクワの街並みを眺めることができます。

地下鉄橋

モスクワ地下鉄には、川を渡るための地下鉄橋が複数存在します。特に古いものは、1937年に建設されたフィリョーフスカヤ線のモスクワ川を渡る橋です。また、外部から遮断された地下鉄橋もあり、乗客は橋を渡っていることに気づかないこともあります。

駅名の特徴

駅名には「-スカヤ」で終わるものが多く見られます。これはロシア語で「駅」を意味する「станция」が女性名詞であるため、形容詞が女性形になるからです。

歴史

計画段階

モスクワに地下鉄を建設する計画は、19世紀末から存在していました。しかし、当時の市議会や路面電車事業者の反対などにより、何度も頓挫しました。第一次世界大戦の勃発により、1914年に着工した建設も中断されました。

ソ連時代

1931年、ソ連政府はモスクワ地下鉄の建設を決定し、1935年に最初の路線が開業しました。建設には、欧米の技術者も参加し、島式ホームやエスカレーターが採用されました。独ソ戦中は、地下鉄は防空壕として使用され、多くの市民が避難しました。戦後、環状線や深部の路線が建設され、路線網が拡大しました。

ソ連崩壊後

ソ連崩壊後も、モスクワ地下鉄の拡張は続けられました。新たな路線が開通し、駅の近代化も進められました。現在では、ICカードやタッチ決済など、最新の技術が導入されています。

路線

モスクワ地下鉄は以下の路線で構成されています。

1号線：ソコーリニチェスカヤ線
2号線：ザモスクヴォレーツカヤ線
3号線：アルバーツコ＝ポクローフスカヤ線
4号線：フィリョーフスカヤ線
5号線：環状線
6号線：カルーシュスコ＝リーシュスカヤ線
7号線：タガーンスコ＝クラスノプレースネンスカヤ線
8号線：カリーニンスコ＝ソンツェフスカヤ線
9号線：セルプホーフスコ＝チミリャーゼフスカヤ線
10号線：リュビリーンスコ＝ドミトロフスカヤ線
11号線：カホーフスカヤ線
12号線：ブートフスカヤ線

これらの路線は、モスクワ市内とその周辺地域を網羅し、多くの人々の移動を支えています。

利用

運賃

運賃は、ICカードやタッチ決済で支払うことができます。均一運賃制ですが、ICカードを利用することで割引が適用されます。

運行時間

運行時間は、通常5:30から1:00までです。ただし、一部の路線では終電が早まることがあります。また、祝日には運行時間が延長されることがあります。

モバイル通信

モスクワ地下鉄では、全線でモバイル通信が可能です。また、無料Wi-Fiも提供されています。

車両

モスクワ地下鉄の車両は、主に国内メーカーによって製造されています。近年では、新しい車両が導入され、古い車両は順次引退しています。

名前付き電車

モスクワ地下鉄には、様々なテーマで装飾された「名前付き電車」が運行されています。これらは、モスクワの文化や歴史を伝える役割も担っています。

事故・事件

モスクワ地下鉄では、過去に爆破テロや脱線事故などの事件が発生しています。これらの事件は、モスクワ市民に大きな衝撃を与えました。

メトロ-2

「メトロ-2」とは、モスクワ地下鉄に並行して建設されたとされる秘密の地下鉄網です。核戦争時の避難所として建設されたと噂されていますが、その存在は公式には確認されていません。

まとめ

モスクワ地下鉄は、その美しい内装、効率的な輸送能力、そして長い歴史を持つ、モスクワ市民にとってなくてはならない存在です。観光客にとっても、モスクワの魅力を知る上で欠かせないスポットと言えるでしょう。

もう一度検索