モデナの真珠

モデナの真珠

『モデナの真珠』は、ラファエロ・サンツィオによって1518年から1520年ごろに描かれた『聖母の頭部』を指します。この作品は、イタリアのルネサンス期における優れた絵画の一つとされ、現在はモデナのエステンセ美術館に所蔵されています。ラファエロの『聖家族』に描かれた聖母マリアの顔が元となり、その典型的な構図を再現しています。

作品の構成と特徴

この絵画は、暗いバックグラウンドを背にした女性が、目を半分閉じ、うつむき加減で描かれています。その女性こそ、プラド美術館の『聖家族』に登場する聖母マリアであり、彼女の姿勢からは周囲の幼児たちを見守る優しさが伝わってきます。ラファエロによるこの作品は、彼の特有のスタイルに基づいており、聖母マリアのポーズは過去の作品にも反映されていることが確認されています。

特别に、1509年から1510年の間に描かれた『アルドブランディーニの聖母』や、1520年のある素描にも似た姿が見受けられます。このことからも、ラファエロの特徴的なスタイルが一貫していることが理解できます。また、作品の彩色や塗りの順序はラファエロならではのクオリティを示し、彼の弟子ジュリオ・ロマーノの手が加わったのは最終的な仕上げであることが伺えます。

さらに、『モデナの真珠』が元々大型の板絵から切り取られて小型化されたことも指摘されており、その際にできた損傷が縁に残されています。この作品は、小さなサイズに加工されたことで独創的な美しさを余すことなく表現しています。

再発見と評価

長い間、この絵画はエステンセ美術館の収蔵庫に保管され、華やかな額縁に収められていました。20世紀後半には、ラファエロの弟子による模写に過ぎないと考えられ、注目されることはありませんでした。しかし、2009年にモデナの美術監督官マリオ・スカリーニがその存在に気付き、作品の優れたクオリティに目を引かれました。その特徴的な高級な額縁は、一般的な小品に用いられるものとは異なり、価値ある作品を示唆しています。

さらに、彼は絵画をフィレンツェのアート・テスト研究所で科学的に調査し、作品がラファエロによって描かれた可能性が高いことを示す証拠を発見しました。分析の結果、異なる時代の修復が施された層の中に、重要なオリジナルの描写が含まれていたことが確認されました。このオリジナル下絵のクオリティは非常に高く、それがラファエロの作には間違いないとする根拠となっています。

来歴

『モデナの真珠』の初期の歴史やそれがどのようにエステ家のコレクションに加わったのかは不明です。ただし、17世紀にはすでにエステ家の所有物であったことは確かで、フランチェスコ1世・デステ公爵がラファエロの作品を熱心に収集していた記録が残っています。1670年には、エステ家の財産目録が作成され、その中にはラファエロ作とされる女性の肖像画が記されています。

この作品は1746年のドレスデン・セール際にも快速されることなく、エステ家に留まり続け、現在ではエステンセ美術館に、約3,500万ユーロの価値を持つ芸術品として所蔵されています。『モデナの真珠』は、ラファエロの魅力を余すところなく伝え、長い歴史の中で価値を増し続けていることを示しています。

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