モデナ大聖堂

モデナ大聖堂：ロマネスクとゴシックの融合が織りなす聖なる空間

イタリア北部の街モデナに位置するモデナ大聖堂は、ヨーロッパを代表するロマネスク建築として名高く、ユネスコの世界遺産にも登録されています。1099年、主任建築家ランフランコの手によって着工されたこの大聖堂は、モデナの守護聖人である聖ジェミアヌスの墓を収める役割を担い、5世紀から続く聖地の歴史を受け継いでいます。現在も、大聖堂内の納骨堂には聖人の遺物が安置されています。

ランフランコからカンピオーネ、そしてグリエルモへ続く建築と装飾

ランフランコによる初期の建設後、大聖堂はアンセルモ・ダ・カンピオーネとその弟子たち「カンピオーネの職人たち」によって装飾されました。このため、ファサードはロマネスク様式の中にゴシック様式の要素も取り込んだ、独特の様式となっています。13世紀にアンセルモによって追加された壮麗なバラ窓は、大聖堂の象徴的な存在です。入り口付近には、古代ローマ時代のライオン像がプロティロの円柱を支え、大聖堂の歴史の深さを物語っています。

ファサード：ロマネスク彫刻の粋を集めた芸術の宝庫

モデナ大聖堂のファサードは、アンセルモと同時代の彫刻家グリエルモ・ダ・モデナによるレリーフで飾られています。預言者や総主教の肖像、聖書の物語を主題としたこれらの彫刻は、ロマネスク様式彫刻の最高峰と評されています。「アダムとイヴの創造」、「原罪」、「ノアの物語」といった、聖書の重要な場面が力強く表現されている点も見どころです。

側門もまた、見逃せないポイントです。グランデ広場側にあるポルタ・レジア（王の門）はカンピオーネ派によるもので、ポルタ・デイ・プリンチピ（王子の門）はグリエルモの弟子たちが聖ジミニャーノの生涯を描いたレリーフで飾られています。北側のポルタ・デッラ・ペスケリア（魚市場の門）は、1年の暦をモチーフにしたレリーフや、アーサー王物語を題材にしたレリーフなど、多様なモチーフが用いられている点が特徴です。

内装：名だたる芸術家たちの作品が彩る神聖な空間

大聖堂の内部は3つの身廊に分けられています。中央の身廊と納骨堂の間には、アンセルモ・ダ・カンピオーネによる『最後の晩餐』や大理石製のキリストの受難像などの貴重な作品が安置されています。アッリーゴ・ダ・カンピオーネによる説教壇も、小さなテラコッタ像で飾られた見事なものです。14世紀の木製十字架像も有名です。

モデナ出身の偉大な芸術家たちの作品も大聖堂に数多く収蔵されています。アントニオ・ベガレッリによる1527年の『キリストの降誕』像や、彫刻家グイド・マッツォーニによる1480年の『Madonna della Pappa』(納骨堂)などが有名です。

トッレ・チヴィカ：大聖堂に付属する鐘楼

大聖堂には、トッレ・チヴィカと呼ばれる鐘楼が付属しています。この鐘楼も、大聖堂と一体となってモデナの街並みを彩る重要な建造物です。

世界遺産としての価値

モデナ大聖堂は、ランフランコを始めとする数々の建築家たちの技術と創造性が結実したロマネスク様式とゴシック様式の融合建築として、世界遺産登録基準(1)「人類の創造的才能を表現する傑作」に該当すると評価されています。さらに、隣接する市民の塔（トッレ・チヴィカ）とグランデ広場と一体となった景観は、中世イタリアの自由都市の発展や、信仰と市民生活の結びつきを示す優れた例として、1997年に世界遺産に登録されました。

モデナ大聖堂は、単なる宗教建築を超えた、中世イタリアの歴史と文化、そして芸術の粋を集めた貴重な遺産なのです。

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