モトール・シーチ

モトール・シーチ: ウクライナの航空エンジン製造業者

モトール・シーチ（ウクライナ語: АТ «Мотор Січ»）は、ウクライナ南部のザポリージャに本社を置く、航空用エンジンと産業用ガスタービンの製造を専門とする企業です。この会社のスローガンは「飛行を生み出すためのエネルギー」であり、その名の通り、航空産業において重要な役割を担っています。

歴史と背景

モトール・シーチは、ソビエト連邦の崩壊以前から活動しており、特にアントノフAn-124およびAn-225といった大型輸送機に使用されるD-18TターボファンエンジンやD-36/D-436シリーズなど、多くの航空機用エンジンを製造してきました。ソビエト連邦崩壊後も、同社はロシア製のヘリコプター、具体的にはカモフのKa-50やミルのMi-24、Mi-28などの約80％にエンジンを供給してきた実績があります。

さらに、近年ではトルコのTAI T929 ATAK 2やUCAVバイラクタルTB2にエンジンを提供する意思表示もしています。これにより、モトール・シーチは国際的な市場でもその存在感を示しています。

経営の変遷

1991年以降、モトール・シーチの経営権はロシア系ウクライナ人実業家ヴャチェスラウ・ボフスライェウが握っています。彼はヴィクトル・ヤヌコーヴィチ政権に近い政治家であり、ウクライナとロシアの関係の変化にも影響を受けてきました。2014年からのクリミア危機以降、ロシアとの取引が難しくなり、中国が主要な顧客となっていく中で、重慶でのエンジン生産も合意されました。

中国企業との関係

2017年には中国航空発動機集団の子会社がモトール・シーチの株式の一部を取得しましたが、安全保障上の理由でウクライナの裁判所によって一時的に凍結されました。ウクライナ保安庁による調査では、中国企業が実質的に過半数の株式を保有していたことが発覚し、この問題は今なお注視を集めています。

国有化と最近の出来事

2021年、モトール・シーチはその「戦略的重要性」から再国有化されることが決定され、ウクライナの大統領によってその命令が発効しました。これは、企業が持つ軍需産業への重要性を考慮した措置です。

2022年2月、ロシアの軍事侵攻により、モトール・シーチは新たな問題に直面しました。ボフスライェウと幹部が、ロシアの国営軍事企業と結託してエンジンを不正に輸出していたとして逮捕され、反逆罪の容疑がかけられました。これは、ウクライナにおいて大きな政治的影響を及ぼす出来事となりました。

結論

モトール・シーチの歴史は、ウクライナの航空産業の発展に深く結びついています。経営体制や国際的な関係の変化により、様々な課題に直面していますが、今後の動向にも注目が集まります。

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