モバード (時計)

モバード(Movado): スイスの革新的な時計メーカー

モバードは、1881年にアシール・ディテシェイムによってスイスのラ・ショー＝ド＝フォンに設立された時計メーカーです。1905年に、エスペラント語で「運動」を意味する「Movado」に社名を変更しました。

歴史と変遷

創業当初は高度な技術力を持つマニュファクチュールとして知られていましたが、クォーツショック以降は他社製の機械式およびクォーツムーブメントを使用するようになりました。現在はアメリカ資本となり、コンコルドやエベルとグループを形成し、ニューヨーク証券取引所に上場しています。

代表的な製品

モバードは、その歴史の中で数々の革新的な時計を生み出してきました。以下に代表的な製品を紹介します。

エルメト

1926年に発売された懐中時計で、文字盤を保護するために開閉式のケースを備えています。開閉の動作でゼンマイが巻き上げられるため、頻繁に巻き上げる必要がありません。エルメトには、大型のエルメトプルマン、小型のベビーエルメト、アラーム付きのエルメトフォン、デイト付きのエルメトカレンダイン、エルメトスコープ、トリプルカレンダー・ムーンフェイズ付きのカレンダーメトなど、様々なバリエーションが存在します。カルティエやティファニーにもOEM供給されていました。

アクヴァティック

1930年代から1950年代にかけて製造された防水スポーツモデルに与えられたペットネームです。カルティエにもOEM供給されていました。スクリューバックの裏蓋と独特なデザインのラグが特徴です。

トリプルカレンダー

手巻きモデルはカレンドグラフ、自動巻きモデルはカレンドマチック、ムーンフェイズ付き手巻きモデルはアストログラフという名称で、1940年代から1950年代にかけてモバードの代表作の一つとなりました。ティファニーにもOEM供給されていました。カレンドマチックに使われたキャリバー223Aは、超高級品を除けば唯一「31日から1日になる時に月表示を自動で進める」機能を持っていました。

クロノグラフ

手巻き時代の製品としては、キャリバー90、キャリバー90M、キャリバー95Mが有名です。一般的な30分計の代わりに60分計を持ち、4時位置のプッシュボタンがスタート/ストップ、2時位置のプッシュボタンがリセットである点、一部モジュール化され整備がしやすい点などが特徴です。防水機能を持つモデルにはクロナクヴァティックというペットネームが与えられています。1969年には、ゼニスと共同でエル・プリメロを開発しています。

ミュージアム・ウォッチ

1947年にロシア出身のアメリカ人デザイナー、ネイサン・ジョージ・ホーウィットによってデザインされ、1961年にモバードから販売されるようになりました。黒地に12時位置の金属製ドットのみを配した文字盤と二針が特徴です。現在も同社の代表作として、オリジナルの復刻版およびバリエーションが販売されています。

Time/5

1988年にアンディ・ウォーホルによってデザインされ、250本限定で製造されました。デザインには7年もの歳月が費やされ、最終的に5個の腕時計が連なってブレスレットを形成する形となりました。文字盤には、ウォーホル自身が撮影したニューヨークの風景写真が使用されています。

モバードは、その革新的なデザインと技術力で、時計業界に大きな影響を与え続けています。

参考資料

別冊家庭画報『世界の特選品 時計大図鑑』世界文化社
モバード公式サイト(英語)

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