モヒの戦い

モヒの戦い：1241年、モンゴル帝国の鉄蹄がハンガリーを蹂躙した日

1241年4月11日、現在のハンガリー、シャイオ川流域のモヒで、歴史の転換点を迎える大規模な戦闘が勃発しました。それは、モンゴル帝国の侵攻軍とハンガリー王国軍との間で繰り広げられた、モヒの戦い（またはシャイオ河畔の戦い）です。この戦いは、モンゴル帝国による東欧侵攻において、重要な転換点となる出来事でした。

ヨーロッパへのモンゴル帝国の侵攻：東からの脅威

1236年、バトゥ率いるモンゴル軍は、東欧への大規模侵攻を開始しました。ヴォルガ・ブルガール、グルジア、アルメニア、チェチェンなど、数々の地域がモンゴルの鉄蹄の下に蹂躙されました。その後、クマン人やルーシ諸国を征服し、勢力を拡大していきました。

1240年末にはポーランドに侵攻、トゥルスクの戦い、フミェルニクの戦いで勝利をおさめます。その後、モンゴル軍は二手に分かれ、バイダル率いる部隊がポーランド方面に、バトゥ率いる本隊がハンガリーへと進軍しました。ハンガリー王ベーラ4世は、北でバイダル率いる部隊と対峙するシロンスク公ヘンリク2世を援護しつつ、本隊を迎撃しようとしました。

モヒの戦いの発端：ハンガリー軍の戦略とモンゴルの奇襲

バトゥ率いるモンゴル軍本隊は、カルパチア山脈を越え、ハンガリー平原に侵入しました。ベーラ4世は、約10万の軍勢を集結させ、モンゴル軍を迎撃しようとしました。

ハンガリー軍は、シャイオ川とヘルナッド川の合流地点付近のモヒ平原でモンゴル軍と対峙しました。モンゴル軍は、バトゥとスブタイの二部隊に分かれており、バトゥ隊がハンガリー軍と最初に遭遇しました。

当初、ハンガリー軍はモンゴル軍の数的不利を認識し、優勢な兵力をもって防御陣を築きました。しかし、モンゴル軍は、7台の投石機（回回砲）を駆使し、ハンガリー軍の橋頭堡への集中砲火を開始しました。この奇襲的な攻撃と、それに続く騎馬隊の突撃によって、ハンガリー軍は混乱に陥りました。

戦いの激化とハンガリー軍の壊滅

モンゴル軍は、投石機と弓矢による圧倒的な遠隔攻撃でハンガリー軍を制圧していきました。そして、スブタイ率いる別働隊が戦場に到着し、ハンガリー軍を完全に包囲しました。モヒ平原の狭い地形は、大規模なハンガリー軍の機動を妨げ、多くの兵士がモンゴルの矢弾の餌食となりました。

戦闘は激しく、ハンガリー軍の騎兵隊は何度も突撃を試みましたが、モンゴル軍の巧みな戦術の前に撃退されました。最後には、スブタイによって意図的に作られた脱出路から一部の兵士が脱出を試みましたが、モンゴルの軽騎兵に追撃され、ほとんどが捕縛もしくは殺害されました。

戦いの結果とその後

モヒの戦いは、ハンガリー軍の壊滅的な敗北という結果に終わりました。ベーラ4世は辛くも脱出しましたが、ハンガリーはモンゴルの支配下に置かれました。

一方、レグニツァの戦いでは、バイダル率いるモンゴル軍がシロンスク公ヘンリク2世率いるポーランド・ドイツ連合軍を破り、ポーランド南部もモンゴル勢力の支配下に置かれました。

モンゴル軍はその後、ウィーンを目指して進撃を開始しましたが、1242年にオゴデイ・カアンの急死により、撤退命令が下され、東欧からの撤退を余儀なくされました。しかし、モヒの戦いは、ハンガリー王国に大きな傷跡を残し、その後の歴史に大きな影響を与えました。

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