バトゥ

バトゥの生涯とその影響

バトゥ（1207年 - 1256年）は、ジョチ家の2代目当主であり、モンゴル帝国の重要な指導者となった。彼はチンギス・カンの長男であるジョチの次男で、ジョチ・ウルスの実質的な創設者として名を馳せている。彼の名前は漢語では抜都、巴禿などと表記され、カナ表記ではバツやバトとされる。

生い立ちと当主就任

バトゥは、中国のコンギラト部族から母を持ち、母の出身が彼の家督継承に影響を与えたと考えられている。父のジョチが亡くなった後、異母兄オルダが病弱だったため、バトゥは1225年に当主となり、ジョチ家の指導者としての道を歩んだ。

西方遠征

彼の指導した西方遠征は1236年に始まった。モンゴル帝国の第2代皇帝オゴデイの命を受けて、バトゥはヨーロッパ遠征軍の総司令官に任命され、スブタイやモンケなどの名将を部下に持ち、大規模な軍事行動に乗り出した。この遠征は、次世代のモンゴル帝国の中核を担う皇子たちが参加し、モンゴルの勢力拡大に大きく寄与した。

遠征の内容

バトゥは約1万人の兵を率いて、ジョチ家の領土を越えて、アス、ブルガール、キプチャクの部族などを征服し、西方のルーシやポーランド、ハンガリーなどに進出した。彼の軍は夏を移動に費やし、秋までにはジョチ家のオルドを越えてイリ方面に到達し、冬季にはアスやブルガール人の征服に取りかかった。特に、ヴォルガ・ブルガール地方においては、指揮官スブタイがブルガールの首長を降伏させる結果を導いた。

ルーシの征服

1237年にはルーシ方面へ侵攻し、リャザンなどの重要な都市を陥落させる。この戦役には、ウラジーミル大公国の攻略や、ノヴゴロド公国への脅威も含まれていた。特にこの年は、バトゥが君臨したモンゴル軍がルーシの北部諸国を征服したことが際立つ。バトゥの軍は南に進路を変え、カフカス北部を攻略しつつ、他の支配地域を広げていった。

ハンガリーとポーランドの征服

1240年、バトゥはハンガリーとトランシルバニア方面から侵攻を開始し、ポーランド王国やカルパチア山脈を越え、ベルカ王との戦闘を通じてハンガリー全土を支配下に置く。この一連の戦役は、彼の名声を決定づけるものであった。

退陣と後の対立

1241年12月21日にオゴデイが死去し、バトゥは遠征軍の帰還を余儀なくされる。彼はモンゴル帝国の重鎮としての立場を維持しながら、次の皇帝候補との政治的な争いにも巻き込まれるなど、内政でも影響力を持ち続けた。

家族と後継者

バトゥにはサルタク、トクカン、エブゲン、ウラクチの4人の子がいたが、ジョチ家の家督を継いだのは次弟のベルケであった。彼の死後、長男のサルタクが家督を引き継ぐはずであったが病没し、後継者問題が後の世まで尾を引くこととなる。

評価

バトゥは軍事的な成功を収め、国家の基盤を強固にした一方で、その残虐性から悪逆非道な存在としても知られている。彼の政策には寛大さも見られ、モンゴル人からは「偉大なる賢君」と称賛される時もあったが、敵に対しては厳しい姿勢を崩さなかった。

晩年と死

1256年、バトゥはヴォルガ河畔のサライで亡くなる。彼の死はモンゴル帝国において重要な転機となり、遥かに広範な地域を支配した彼の功績は、その後のジョチ・ウルスの発展にも大きく影響を与えた。

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