モラーヌ・ソルニエ N

モラーヌ・ソルニエ N（Morane-Saulnier N）

モラーヌ・ソルニエ Nは、フランスのモラーヌ・ソルニエ社によって設計され、第一次世界大戦で活躍した単葉戦闘機です。この機体は1914年7月22日に初飛行し、1915年からの運用が実施されました。初期の単葉戦闘機としては先進性を持ち、当時の空気力学の理論を取り入れた設計が特徴的です。特に、中翼配置の単主翼を持ち、機体全体が流線型の優れた姿を成していました。

設計と特性

モラーヌ・ソルニエ Nは、操縦の難しさが際立った機体でもありました。主翼全体をたわませることで補助翼の役割を果たす「たわみ翼」方式は、操縦時に独特の技術を要求しました。この操縦方法は一見斬新でしたが、実用性においては厳しい課題を抱えていました。特に、高い着陸速度はパイロットにとって大きな負担であり、操縦の難しさを一層増す要因になっていました。

機首には大きな金属製スピナーが取り付けられており、これにより空力性能が向上する一方で、エンジンへの空気供給が妨害され過熱を引き起こすことがありました。実運用が始まった後、この問題を解決するためにスピナーは取り外されました。この処置により、空気抵抗は増加したものの、機体の性能に及ぼす影響は軽微でした。

武装と運用

モラーヌ・ソルニエ Nの武装には、操縦席前方に向けて取り付けられた1挺の機関銃が含まれています。この機関銃はプロペラ回転面を通過する弾丸を発射することができるよう設計されており、跳弾板が装備されていました。これにより、パイロットは射撃を行う際、機体の軸線と弾道を一致させられるため、プロペラに弾丸が当たった場合でも、機体の機能が損なわれにくくなっていました。ただし、この設計は重量や空気抵抗の増加を招き、結果として推進効率が低下してしまうという欠点がありました。さらに、操縦席前面には防弾ガラス製の風防板も設けられ、パイロットの安全を確保しています。

生産と運用国

モラーヌ・ソルニエ Nはその革新性にもかかわらず、戦争の急速な進展に取り残されがちで、最終的にはわずか49機が生産されるにとどまりました。1915年4月にはフランス空軍に「MS.5C.1」として配属され、イギリス陸軍航空隊でも装備されました。また、一部の機体はロシア帝国航空隊やウクライナ軍航空隊でも使用されました。これらの運用を通じて、モラーヌ・ソルニエ Nは第一次世界大戦の空を飛びましたが、その活躍は限られたものでした。

後世の影響

第一次世界大戦の複葉戦闘機と同様に、後の時代にモラーヌ・ソルニエ Nのレプリカ機も製作されています。ただし、現代の航空基準に適合するため、オリジナルの「たわみ翼」方式ではなく、エルロンを搭載したモデルへと変更されていることが一般的です。このように、モラーヌ・ソルニエ Nは航空機技術の発展において貴重な試みの一例として位置づけられています。

性能諸元

• - 乗員: 1名
• - 全長: 5.83メートル
• - 全高: 2.25メートル
• - 翼幅: 8.15メートル
• - 翼面積: 11平方メートル
• - 空虚重量: 118キログラム
• - 運用時重量: 444キログラム
• - 動力: ル・ローヌ 9C 空冷ロータリーエンジン
• - 最大速度: 144 km/h（地上）
• - 航続距離: 約1時間30分
• - 実用上昇限度: 4,000メートル
• - 上昇率: 2,000メートルまで10分

武装

• - 機関銃: 1挺（前方固定式）

- 7.9 mm ホッチキス航空機銃（N/Nm型）
- 0.303インチ（7.7 mm）ビッカース航空機銃（I/V型）

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