モリ (称号)

モリ（守）とその歴史的意義

モリ（守）は古代日本の3世紀から6世紀にかけて使用されていた語尾名称で、地域や海運の首長に関連づけられたものです。この名称は、後に原始的カバネとして機能するようになりました。モリの歴史を辿ることで、日本古代社会の構造や文化に対する理解が深まります。

ヒナモリ（卑奴母離）

遅くとも魏志倭人伝に登場するヒナモリは、「鄙守」という意味があり、辺境地域の守備を担当する軍事長官を指していたと考えられています。この役割は、当時の日本における防衛や治安の維持において非常に重要な位置を占めていました。ヒナモリが存在したことで、社会はその地理的背景から独自の防衛体系を持ったことがうかがえます。

タジマモリ（多遅摩毛理、田道間守）

また、タジマモリは垂仁天皇の時代に海外使節の職を担った人物として知られています。記紀によると、彼はサキツミミ（前津耳）の子孫で、神功皇后と結びつく葛城之高額比売の祖とされています。このような家系図は、日本の神話や歴史において重要な意味を持っており、さらに古代の神社にもその影響が見て取れます。

本居宣長によれば、タジマモリの関連する但馬国の神社には、次のような場所があります：

• - 「前津見神社」
• - 「諸杉神社」
• - 「日出神社」
• - 「杜内神社」
• - 「須加神社」

これらの神社は、タジマモリの血縁関係にある人物とのつながりを示す証拠となり、地域の文化や信仰を物語っています。

ククマモリ（玖玖麻毛理）

『古事記』には、倭建命の妃として「ククマモリ」のヒメが記載されています。これは、山城国の久世郡栗隈（くりくま）に関連しているとされ、当時の社会構造や家族のつながりを探る上で、興味深い視点を与えてくれます。

モリとモロの関係

モリ（守）は、しばしばモロ（諸）に転化することがあります。この現象は、異なる地域や文化の影響を考慮した場合、名称や地名に新たな解釈をもたらします。たとえば、ヒナモリのある日向国の「モロアガタ」は「モリアガタ」に変わり、地名の進化を示しています。また、他の地名や神社名もこの視点から整理されることがあります。ここから新たな古語や意味の付加が発見されるかもしれません。

カニモリ（蟹守、掃守）

また、カニモリという名称は、後にカンモリ、さらにカモリと変化しました。和泉国には掃守郷が存在し、これが「カニモリ」と呼ばれていたという記録があります。実際、加守町や出雲国の加毛利神社には、守を意味するカモリが見て取れます。このような変遷は、言葉がどのように時間を経て進化するか、また、それが社会に与える影響を考える良い例です。

新撰姓氏録において、掃守連のカバネが雄略天皇時代に授与されたという記載もあり、これによってカニモリの重要性がさらに高まります。モリという語尾は、古代日本の社会における組織的な役割を理解するために欠かせない要素です。


以上のように、モリという名称は単なる語尾ではなく、古代日本の社会構造や文化、地域の神社や人名に刻まれた重要な意味を持っています。その背景には、巧妙に絡み合った歴史が隠されており、私たちはその解読を通じて先人たちの生活や考え方に迫ることができます。

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