モリタ (歯科医療)

株式会社モリタ

株式会社モリタは、大阪府吹田市に本社を構える、日本の歯科医療を支える総合商社です。歯科材料、大型機器、そして情報システムに至るまで、幅広い製品の製造・販売・輸出入を手掛け、2013年度のデータでは、歯科材料・大型器械・情報機器の卸売市場において国内シェアの56.4%を占めるなど、業界内で確固たる地位を築いています。

創業と発展の軌跡

その歴史は、創業者である森田純一氏が1916年（大正5年）10月、京都市の自宅に「森田歯科商店」を開設したことに始まります。当初は歯科器械や材料の輸入販売から事業をスタートさせましたが、旧制歯科医学専門学校の存在した主要都市に着目し、事業拡大のため全国へ拠点を広げました。1918年には東京に、1921年には大阪に、そして1923年には九州小倉に営業拠点を設立し、販路を拡大していきました。

輸入販売と並行して、自社での製品製造にも着手します。1921年には知人の自転車店に治療台の修理を依頼する中で製造への関心を深め、京都市内に工場を設け、工作機械を設置して歯科器械製造部門を創設しました。大型器械の製造にも意欲的に取り組み、1927年（昭和2年）には、当時の先進的な海外製品をモデルとした初の本格的な国産歯科用ユニット「J. M. ユニット A 型」を完成させ、国内歯科医療の発展に大きく貢献しました。

その後、組織再編を経て、1972年には社名表示をカタカナの「モリタ」に改称。1977年には大阪の本社機能を吹田市に新築移転し、これを「デンタルプラザ」と命名しました。さらに1992年には東西のグループ会社が合併し、現在の株式会社モリタとして統合的な運営体制を確立しました。2016年には創業100周年を迎え、その歴史に新たな一歩を刻んでいます。

創業者 森田純一の人物像

創業者・森田純一氏は1883年（明治16年）、滋賀県の地方役人の家庭に生まれました。慶應義塾に進学して勉学に励みましたが、18歳の時に後援者と実母を相次いで亡くすという苦難に見舞われ、学業を断念せざるを得なくなりました。その後、京都の貿易商である大澤商会に入社し、海外との幅広い取引を通じて高級時計や自転車、蓄音機など様々な輸入品の販売拡大に尽力しました。

この経験から、海外の先進的な歯科器械や材料の輸入販売という新たな事業機会に着目しました。大澤商会の常務を務めながらも、その情熱を胸に独立を決意し、森田歯科商店を創業したのです。彼の先見の明と、事業拡大への強い意志が、今日のモリタの礎を築きました。

歯科医療の変革をもたらした水平診療

モリタの歴史を語る上で欠かせないのが、「水平診療」という革新的なコンセプトの普及です。かつて歯科診療は、患者さんが椅子に座って上半身を起こし、歯科医師が立ったまま患者さんの口元を覗き込むスタイルが主流でした。しかし、モリタは1963年にDr. ビーチ氏と協力し、患者さんを水平に寝かせ、歯科医師が頭部後方に座って治療を行うという、それまでの常識を覆す歯科診療装置「スペースライン」を開発しました。

この画期的な装置は、同年に米国で開催された第104回米国歯科医師会（ADA）年次大会併設のデンタルショーに出品されました。しかし、当時世界最高レベルとされた米国の歯科医療界でさえ、この水平位診療という発想は時期尚早と捉えられ、国内でも同様の反応でした。

既成概念を打ち破り、新たな診療スタイルを普及させるため、モリタはDr. ビーチ氏とともに、多くの歯科医師と連携したキャラバン隊を結成。1965年（昭和40年）11月からは、日本全国で実践的な有料セミナーを精力的に展開しました。この粘り強い普及活動は後に海外にも広がり、その結果、水平診療は世界中の多くの歯科医師やディーラーに受け入れられ、現在の歯科診療における標準的なスタイルの一つとして確立されるに至りました。

社会貢献と企業文化

モリタグループは、事業活動を通じて社会に貢献することを目指しています。その一環として、1966年には「財団法人森田奨学育英会」を設立しました。これは、経済的な困難を抱える優秀な学生に奨学金を給付することで、歯科医学・医術の向上に貢献できる有能な人材の育成を目的としています。大学や大学院で学ぶ日本国民を対象に、学業・人物ともに優れ、経済的な支援が必要と認められる学生に対して、給付型の奨学金を提供しています。

また、歯科医療に携わる企業として、社員の健康増進にも力を入れています。「健口」への取り組みとして、社員一丸となって歯科健診の受診率100%を目指す活動を推進し、実際に高い受診率を達成しています。

さらに、モリタが運営する有料会員組織「モリタ友の会」では、「ビバリーくん」というマスコットキャラクターが親しまれています。歯が丈夫なビーバーをモチーフにしたこのキャラクターは、会員向けの提供品やイベントに登場し、モリタグループを身近に感じさせる存在となっています。公式サイトでは、ビバリーくんのイラスト素材も提供されており、広く活用されています。

国内外に多数の関連会社を持つモリタグループは、常に時代の変化に対応しながら、革新的な製品とサービスを通じて世界の歯科医療の発展に貢献し続けています。

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