モルガンお雪

モルガンお雪の生涯

モルガンお雪、1881年11月生まれ、1963年5月に逝去。彼女は日本の伝統芸能の世界で特異な存在感を放った芸妓であり、アメリカの大富豪J.P.モルガンの甥と結婚したことで特に知られています。彼女の本名は加藤ユキであり、芸妓名は「雪香」、また洗礼名としてテレジアを名乗っていました。

幼少期と芸妓福祉

お雪は京都で刀剣商である平助の娘として生まれ育ちました。姉は祇園で茶屋兼置屋「加藤楼」を経営しており、この環境からお雪は14歳で芸妓の道を歩み始めました。当初、彼女は外国人向けの茶屋「小野亭」で芸を披露しており、外国人向けの茶屋は当時、日本人向けに比べて格下とされていましたが、お雪はその中で特に胡弓の演奏に優れていました。

結婚とその影響

1901年、彼女の人生は大きく変わります。当時30歳のアメリカ人富豪、ジョージ・デニソン・モルガンが京都でお雪に出会い、結婚を申し込むのです。彼は失恋の痛手を抱え、日本を旅していました。お雪は当時、10歳年上の恋人がいましたが、すぐにその関係は新聞に取り上げられ、世間の好奇心を煽ります。結局、1904年1月20日、モルガンの莫大な身請け金によって二人は結婚し、横浜で新しい生活を送ることとなりました。結婚式では、帰化したイギリス人法律家、小林米珂が媒酌人を務めました。

日本とアメリカでの生活

結婚後、お雪はアメリカに渡りますが、当時制定されていた排日法により帰化は許されませんでした。1905年には一時帰国を果たしましたが、彼女は「金に目がくらんだ女」とメディアに揶揄され、批判を浴びることとなります。それでも、モルガンと共に南禅寺近くの別荘で生活し、日米の文化を享受しました。その後、フランスへ移り、社交界での生活を楽しむようになります。

苦難と再出発

しかし、運命は再び彼女に試練を与えます。1915年、夫のジョージが心臓麻痺で急死。彼女は遺産相続を巡る裁判に勝ち、60万ドルという資産を得ましたが、米国籍を剥奪され無国籍者となります。以降はフランスで静かな暮らしを送りますが、1916年には新しい恋人、陸軍士官のサンデュルフ・タンダールと同棲を始めるものの結婚は避けました。

日本への帰還と新たな人生

1938年、第二次世界大戦の影響を受け、彼女は帰国を決心。長崎港に到着した際には日本語を書くことができず、三味線や小唄も忘れてしまったと語りました。その後、日本敗戦によって遺産相続権を回復し、71歳でキリスト教の洗礼を受け、以後は紫野で静かに暮らしました。96年には、加藤なみゑと共に穏やかな日々を送り、1963年に急性肺炎で死去しました。

最後に

モルガンお雪の人生は、愛と裏切り、成功と失敗に満ちた波乱のドラマでした。彼女の死後、パリ市から「ユキサン」と名付けられた新品種のバラが京都市に贈られ、彼女の記憶は今も語り継がれています。

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