モンセフ・マルズーキ

モンセフ・マルズーキ：チュニジアの民主化に尽力した人権活動家

モンセフ・マルズーキ（1945年7月7日 - ）は、チュニジアの人権活動家、内科医、そして政治家です。彼は2011年12月12日に制憲議会でチュニジアの大統領に選出され、2014年末までその職を務めました。マルズーキは、長年にわたり人権擁護と民主化運動に献身し、チュニジアの政治変革期において重要な役割を果たしました。

人権活動家としての歩み

マルズーキは、グロンバリアで生まれ、フランスのストラスブール大学で薬学を学びました。1979年にチュニジアに帰国後、スースにコミュニティ・メディシン・センターを設立し、地域医療の向上に貢献しました。また、児童虐待防止のためのアフリカ・ネットワークを結成するなど、人権擁護活動にも積極的に取り組みました。チュニジア人権同盟にも参加し、マハトマ・ガンジーの非暴力抵抗運動を学ぶためにインドを訪れたり、アパルトヘイトから転換した南アフリカ共和国を訪問するなど、国際的な視野も広げました。

政治活動への参加

1991年、政府がイスラーム主義政党のナフダを弾圧した際、マルズーキは当時のザイン・アル＝アービディーン・ベン・アリー大統領に対峙し、法の遵守を求めました。1993年には「良心の囚人の国家防衛委員会」の創立委員となりましたが、委員会が政権の支持者に掌握されたため辞任しました。その後、虚偽報道の喧伝や、禁止されているイスラーム主義団体に関与したとして起訴されることもありました。彼は自由国民委員会を結成し、アラブ人権委員会の委員長にも就任しました。

2001年に設立した共和国のための会議(CPR)は、2002年に活動を禁止されたため、フランスに拠点を移して活動を続けました。2011年のジャスミン革命でベン・アリー大統領が亡命すると、マルズーキはチュニジアに帰国し、大統領選への立候補を表明しました。

大統領としての役割

2011年12月12日、チュニジアの制憲国民議会は、マルズーキを暫定大統領に選出しました。就任後、彼はナフダのハンマーディー・ジバーリーを首相に指名し、ジバーリー内閣は同年12月20日に発足しました。

大統領在任中、マルズーキはチュニジアとリビアの合併を提唱しました。また、ジャスミン革命以降発令されていた非常事態令を解除し、財政状況の悪化を理由に自身の報酬を削減するなど、国民に寄り添う姿勢を示しました。2014年には、アラブの春を成功に導いた功績が評価され、ノーベル平和賞の候補にも挙げられました。

大統領退任後

2014年末に大統領を退任した後も、マルズーキは人権擁護と民主主義の推進に尽力しました。しかし、2021年11月には、国家の安全を危険にさらしたとして国際的な逮捕状が出されるなど、晩年は困難な状況に置かれました。

「神への冒とく」判決問題

マルズーキ大統領の時代には、「神への冒とく」を理由とした有罪判決が下されるなど、表現の自由をめぐる問題も発生しました。彼は、これらの問題がチュニジアのイメージを損なう可能性があると指摘し、懸念を表明しました。

モンセフ・マルズーキは、チュニジアの民主化と人権擁護に生涯を捧げた人物として、その功績は記憶されるでしょう。

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