ザイン・アル＝アービディーン・ベン・アリー

ザイン・アル＝アービディーン・ベン・アリー：チュニジアの長期政権とジャスミン革命

ザイン・アル＝アービディーン・ベン・アリー（1936年9月3日 - 2019年9月19日）は、チュニジアの政治家、軍人であり、同国の大統領を23年以上にわたって務めました。彼の統治は、アラブの春の先駆けとなったジャスミン革命によって終焉を迎えました。

生涯と経歴

ハンマーム・スーサで生まれたベン・アリーは、独立運動に加わり、軍の中核メンバーとしてフランスの陸軍士官学校などに留学しました。軍事保安局長を経て、駐ワルシャワ大使、国家保安局長官などを歴任し、1986年には内務大臣に就任しました。1987年、ハビーブ・ブルギーバ大統領によって首相に指名され、事実上の後継者となりました。

大統領就任と政策

1987年11月7日、ベン・アリーは無血クーデターによってブルギーバを退任させ、大統領に就任しました。「11月7日宣言」と呼ばれる最初の演説で、彼は国民に新体制への協力を呼びかけ、民主主義の枠内での国家統治を表明しました。

彼は市民の自由拡大を目指し、政治犯の釈放や国家保安事件裁判所の廃止などを行いました。また、拷問等禁止条約を批准するなど、人権状況の改善にも取り組みました。与党を立憲民主連合に改称し、社会の民主化、多元主義の尊重、法治国家の建設を掲げました。

経済面では、自由主義的な政策を推進し、外国投資を促進しました。これにより、チュニジアは安定的な経済成長を遂げましたが、同時に貧富の格差も拡大しました。

ジャスミン革命と亡命

2010年末、高い失業率や物価高騰を背景に、国民の不満が爆発し、ジャスミン革命が勃発しました。ベン・アリーは事態の収拾を図りましたが、デモは激化し、2011年1月14日、サウジアラビアへ亡命しました。

チュニジアの暫定政府は、インターポールに国際逮捕状を要請し、ベン・アリーをマネーロンダリングと麻薬密売で起訴しました。チュニジアの裁判所は、彼に対し、窃盗、不法所持、暴力扇動などの罪で、欠席裁判で禁固刑を宣告しました。

亡命後の生活と死

ベン・アリーはこれらの判決に服することなく、亡命先のサウジアラビアで2019年9月19日に83歳で亡くなりました。

評価

ベン・アリーは、権威主義的な統治を行い、腐敗を蔓延させた独裁者として批判される一方で、経済自由化による成長と安定をもたらした功績も評価されています。彼の退陣後、チュニジアの政情は不安定化し、新たな強権的な政権が台頭しました。彼の遺産は、チュニジアの政治と社会に複雑な影響を与え続けています。

彼は独立勲章と共和国勲章を受章しています。

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