モンタージュ (漫画)

『三億円事件奇譚 モンタージュ SINCE 1968.12.10』は、漫画家・渡辺潤が手掛けたミステリー作品です。昭和史に刻まれた未解決事件、三億円事件を題材の中心に据え、『週刊ヤングマガジン』（講談社）で2010年から2015年にかけて連載されました。

物語は、現代に生きる少年・鳴海大和を主人公とするパートと、三億円事件発生前後の過去を描くパートが複雑に絡み合いながら展開します。物語の始まりは2004年。10歳の小学生だった鳴海大和は、長崎の路地裏で瀕死の老人を発見します。その老人は警視庁の元刑事・東海林旭と名乗り、大和に「お前の父親は、三億円事件の犯人だ」「誰も信じるな」という衝撃的な言葉を残して息絶えます。同時期に、大和の父・鉄也は東京湾で水死体となって発見されます。天涯孤独となった大和は、幼馴染である小田切未来の家に引き取られ、新しい生活を始めることになります。

そして時は流れ、2010年。高校生となった大和は、父・鉄也の形見である剣道の防具の中から、血痕のついた五百円札を見つけます。この紙幣が、三億円事件で強奪された紙幣と番号が一致したことから、大和の運命は大きく動き出します。さらに、大和の養父母である小田切夫妻が突然失踪。夫妻の失踪が三億円事件と関連があるのではないかと疑念を抱いた大和と未来は、夫妻が向かったとされる軍艦島（端島）へ向かいます。そこで二人が発見したのは、大量の古い紙幣が入ったバッグでした。これは紛れもなく、あの三億円事件の強奪金と思われました。真相を明らかにするため、大和は三億円を持ち帰ることを決意しますが、帰還した港で不審な男たちに遭遇します。その中には、後に二人を執拗に追う悪徳警官・関口二郎も含まれていました。異様な雰囲気を察知した大和と未来は逃走を図り、武雄の道場の門下生と名乗る鈴木泰成の助けを得ますが、関口によって貸しボート店の店主殺害の濡れ衣を着せられ、指名手配犯となってしまいます。

無実の罪を晴らし、消えた養父母の安否、そして三億円事件の真相を追うため、大和と未来は逃亡生活を始めます。長崎を離れ、福岡、広島、東京、沖縄、北海道と各地を転々としながら、様々な人物と出会い、隠された真実の断片に触れていきます。追っ手である関口二郎とその兄・欽一の存在が、彼らの逃亡をさらに過酷なものにしますが、同時に彼らの過去や三億円事件との繋がりも徐々に明らかになっていきます。

一方、過去パートでは、三億円事件の実行犯の一人である青年・川崎雄大（現代編の大和の父・鉄也）を中心に描かれます。長崎から上京した雄大が、元カミナリ族の望月竜や、幼馴染で刑事となった沢田慎之介、竜の恋人・響子といった面々と関わりながら、いかにして事件に関わるようになったのか、そして事件当日、雄大が白バイ警官に扮して現金を強奪するに至る経緯が詳細に描かれます。事件実行後、アジトでの内紛により竜が負傷し、多額の強奪金と共に沢田や公安の須黒といった登場人物の思惑が交錯します。特に、沢田は三億円事件の捜査を担当する傍ら、自身の野心や正義感からある計画を立て、それが後の現代編にも影響を与えることになります。また、現代の追跡者である関口兄弟の特異な幼少期や、彼らを育てた沢田との関係も過去パートで描かれ、現代編の出来事へと繋がっていきます。

本作は、単なる三億円事件の再現ドラマではなく、巨大な未解決事件を縦軸に、登場人物それぞれの複雑な過去、親子や人間関係における業、そして時代の波に翻弄される人々の生き様を描いたヒューマンドラマでもあります。現代と過去の物語が巧みにリンクし、時を超えた因縁がサスペンスフルに展開することで、読者を引きつけます。

本作品は高い評価を受け、2016年にはフジテレビ系列でテレビドラマ化もされました。ドラマ版では、時間の制約などから一部設定や展開に変更が加えられましたが、原作の持つ重厚なミステリーと人間ドラマが描かれました。

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