モンマジュールの夕暮れ

『モンマジュールの夕暮れ』について

フィンセント・ファン・ゴッホが1888年に描いた油絵『モンマジュールの夕暮れ』は、長らく真作であるかどうかが疑われていましたが、2013年にゴッホの作品であることが正式に鑑定されました。この絵は、ゴッホが最も精力的に制作活動を行っていた時期に描かれたもので、彼の芸術的な才能を如実に示しています。

作品の詳細

『モンマジュールの夕暮れ』は、縦73.3センチ、横93.3センチの油彩風景画です。画面前景にはオークの茂みが広がり、その奥にはモンマジュール修道院の廃墟が夕暮れの空に浮かび上がっています。この絵は、ゴッホが当時暮らしていたアルルの郊外、モンマジュールの丘で捉えた風景を描いたものです。ゴッホはこの絵を、代表作である『ひまわり』や『ファン・ゴッホの寝室』を制作した時期に描いており、彼の絶頂期であったことが伺えます。

贋作疑惑と再発見

この絵は、ゴッホの弟テオのコレクションとなった後、1901年に売却されました。1908年には、ノルウェーの実業家クリスチャン・ニコライ・ムスタッドがオスロ国立美術館館長の勧めで購入しましたが、後にフランス駐スウェーデン大使から贋作の可能性を指摘されました。ムスタッドは激怒し、この絵を屋根裏に放置してしまいました。当時、美術界では贋作が横行しており、収集家たちは非常に神経質になっていました。

2011年、現在の所有者によってアムステルダムのゴッホ美術館に鑑定が依頼されました。美術館は最新機器を用いて、絵の具の種類や変色の度合い、描画技法などを詳細に分析した結果、この絵がゴッホの真作であると断定しました。また、ゴッホが弟テオに宛てた1888年夏の手紙の中に、この絵に言及したと思われる記述が2通発見されました。7月5日の手紙には、制作中の絵について触れた箇所があり、これが『モンマジュールの夕暮れ』である可能性を示唆しています。

真作認定と公開

ゴッホ美術館は2013年9月9日に鑑定結果を発表しました。アクセル・リューガー館長は「これほど大きな発見は、ファン・ゴッホ美術館史上初」と述べ、主任研究員のルイ・ファン・ティルボルフも「すべての鑑定結果がゴッホの作品であることを示している」と強調しました。フルサイズのゴッホの絵画が新たに発見されたのは、1928年以来のことです。

真作と認定された当時、この絵は所有者から1年間借り受け、ゴッホ美術館で公開されることが発表されました。この発見は、ゴッホの芸術に対する新たな理解を深める上で非常に重要な出来事となりました。

この絵の発見により、ゴッホの作品研究に新たな光が当てられ、彼の芸術的業績が改めて評価されることとなりました。美術史における重要な発見であり、多くの人々に感動を与えました。

もう一度検索