モン・スニ峠

モン・スニ峠：アルプス越えの歴史と現代の交通路

モン・スニ峠は、フランスのサヴォワ県とイタリアのピエモンテ地方を繋ぐアルプス山脈の峠です。古くから重要な交通路として利用され、中世から19世紀にかけてはアルプス越えの主要ルートの一つとして栄えました。

地理的特徴と交通路

峠はフランスのランスルブール＝モンセニとイタリアのスーザを結んでおり、古来からの街道が現在も主要な交通路として機能しています。峠の南西にはモン・スニ山地が広がり、南側にはモン・スニ湖という人造湖が形成されています。この湖は、イタリア側のチェニスキア川を堰き止めるダムによって作られ、現在の姿になったのは1968年の新たなダム建設後です。

峠を越える道路は、ランスルブール＝モンセニから峠、モン・スニ湖畔、モンチェニージオ西方を経てスーザに至ります。スーザからさらに東へ下れば、ピエモンテ州の州都トリノへ到達します。現在の道路はナポレオン1世によって19世紀初頭に整備されたもので、フランス側は県道1006号線、イタリア側は国道25号線の一部として指定されています。

歴史

モン・スニ峠は、古代から続くアルプス越えの街道として知られ、ハンニバルのアルプス越えのルートの一つであった可能性も指摘されています。312年にはコンスタンティヌス1世もこの峠を越え、中世には巡礼者たちがフランスからイタリアへと向かう重要なルートとして利用されました。

フランス革命戦争中の1794年には、この峠でフランスとサルデーニャ王国軍が激突。ナポレオン時代には道路の整備が行われ、19世紀半ばまではサヴォワとピエモンテ両地域がサヴォイア家のサルデーニャ王国領であったため、トリノとシャンベリを繋ぐ重要な街道として機能していました。

1860年にサヴォワ地方がフランスに割譲されると、モン・スニ峠は国境地帯となり、イタリア王国はヴァル・ディ・スーザ地方を要塞化、モン・スニ峠にも複数の要塞が建設されました。第二次世界大戦後の1947年のパリ条約によって、峠の南東側がイタリアからフランスに割譲されました。

鉄道と近代化

19世紀半ばには、アルプスを越える鉄道建設が計画され、モン・スニ峠の南西約18kmに位置するフレジュス峠の下にフレジュス鉄道トンネルが掘られました。これに合わせて、モン・スニ峠を越えるモン・スニ鉄道も建設されましたが、フレジュス鉄道トンネルの開通（1871年）に伴い廃止されました。現在では、フレジュス鉄道トンネルを代替するトリノ―リヨン間高速鉄道の建設計画があり、モンダンバン山の地下を通るトンネルの建設が検討されています。

ツール・ド・フランス

モン・スニ峠は、世界的に有名な自転車ロードレース、ツール・ド・フランスのコースにも過去5回採用されています。険しいアルプスの山岳地帯特有の挑戦的なコースとして、多くの選手たちの記憶に残る舞台となっています。

モン・スニ峠は、歴史、地理、そして現代の交通網整備という多様な側面を持つ、アルプス地方を代表する重要な場所と言えるでしょう。

もう一度検索