モートン波

モートン波：太陽の巨大な津波

太陽の彩層において観測される、大規模なコロナ衝撃波をモートン波といいます。太陽フレアに起因するこの現象は、その壮大な規模から「太陽の津波」とも呼ばれています。主にHα線（水素アルファ線）を用いた観測によって確認されており、太陽活動の理解に不可欠な要素です。

モートン波の発見と初期の研究

1959年、アメリカ合衆国の天文学者、ゲイル・モートンとハリー・ラムゼーによって発見されました。彼らは、彩層の高解像度Hα線撮影画像を分析する中で、この波状の現象を初めて捉えました。モートンは、この波の伝播速度を秒速500～1500キロメートルと推定していました。しかし、発見後数十年間は、観測技術の限界から研究は進んでいませんでした。

SOHOとSTEREOによる観測

1995年に打ち上げられた太陽観測衛星SOHO（太陽および太陽圏観測所）によって、モートン波の発生源がコロナにあることが示唆されました。この発見をきっかけに、モートン波に関する研究が再び活発化します。

その後、NASAの太陽観測ミッションであるSTEREO（太陽圏相互関係観測所）が、2009年2月に発生した大規模なコロナ質量放出に伴い、モートン波を直接観測することに成功しました。STEREOは、高度10万キロメートル、速度秒速250キロメートルに達する高温プラズマと磁場の波を捉え、モートン波の実在を明確に示しました。この観測結果とモートンの初期の推定値を比較すると、波の速度は、フレアの規模や発生場所など様々な要素に影響されることが分かります。

内田理論による解明

日本の天文学者、内田豊氏による研究は、モートン波の物理的性質の解明に大きく貢献しました。内田氏は、モートン波をコロナ中を伝わる電磁流体衝撃波であると解明し、その理論は「内田理論」として広く知られています。この理論は、コロナ質量放出に伴って発生するII型電波バーストと呼ばれる電波現象とモートン波を結びつけて説明しており、太陽フレアとコロナ質量放出のエネルギー伝播メカニズムの理解を深める上で重要な役割を果たしています。

まとめ

モートン波は、太陽フレアという激しい太陽活動によって引き起こされる、大規模なコロナ衝撃波です。その存在は、初期のHα線観測から、SOHOやSTEREOといった高度な観測衛星による観測、そして内田理論による物理的解明を経て、確固たるものとなりました。今後の研究では、モートン波の発生メカニズムや、太陽活動全体への影響について、より詳細な解明が期待されます。モートン波の研究は、太陽フレアやコロナ質量放出といった、地球周辺の宇宙環境に影響を与える太陽活動の解明に大きく貢献し、ひいては宇宙天気予報の精度向上にも繋がる重要な研究分野です。

もう一度検索