モーニングコート

モーニングコートの概要

モーニングコート（morning dress）は、男性用の昼間の最上級の正装で、特に結婚式や公式行事で多く見られる服装です。このスタイルは、カットアウェイ・フロックコートとも呼ばれ、前裾が大きく斜めにカットされている特徴があります。このデザインは18世紀のイギリス貴族が乗馬用の服装として着用していたものに由来しています。

歴史的背景

モーニングコートの前身は、貴族たちが朝に乗馬を楽しんだ後、直接宮廷に向かうための服装でした。乗馬服が礼服としての役割を果たすようになり、19世紀には公の場でも着用されるようになりました。フロックコートなどの伝統的な礼服が次第に廃れていく中で、モーニングコートは昼間の正式な装いとして認知されていきました。現在のイギリスでは、エリザベス2世の任命式の際など、男性首相が背広型スーツを着用することが一般的です。

使用場面

日本においては、内閣総理大臣や最高裁判所長官の親任式や認証官の任命式などでモーニングコートが着用されます。特別な盛儀や勲章親授式では、モーニングコートではなく燕尾服が選ばれることもありますが、親任式が夜に行われる場合は、モーニングコートが着用されることが通例とされているのです。また、結婚式では新郎や新郎新婦の父、卒業式での学校長などもこの装いを取ります。

結婚式でのスタイル

モーニングコートには、様々なスタイルがあり結婚式においては特に注目されています。イギリスのドレスコードは流行の変化を取り入れており、例えばロイヤルウェディングでは上着や帽子にグレー、ワイシャツやネクタイにカラーや柄物が用いられることがあります。日本でも三笠宮寬仁親王が園遊会でグレーのモーニングコートを着用している例がありますが、宮中の親任式では黒の靴が慣例です。

構成要素

モーニングコートの典型的な構成は次のようになります：

- 上着：前裾がカットされ、ピークドラペルのシングルブレストで作られており、通常は黒色です。1780年ごろの肖像画で確認できるように、当初はカフスボタンが付いていましたが、現在は多くの場面で不使用とされています。
- ボトム：オールシーズン用に選ばれる軽めのグレーの素材が理想的です。
- ウェストコート：上着と同じ素材か、関連色でシングルブレストの5つまたは6つボタン、あるいはダブルブレストの3つボタンデザイン。
- ワイシャツ：白でターンダウンカラー。
- ネクタイ：最高級のシルク製で、無地またはストライプ。
- ポケットチーフ：ネクタイに合わせたシルク製。
- 帽子：トップハットが好まれます。
- 靴：昼間の装いでは地味な黒の革靴やブーツが選ばれます。

昼間の装いにおいては、宝飾品を控えることが一般的で、モーニングコートにはシンプルさが求められます。これらの要素は、モーニングコートが持つ格式や品格を高める重要な部分です。

結論

モーニングコートは、長い歴史を持つ男性の昼間の正装であり、その根底にあるのはイギリスの貴族文化です。日本国内でも特別な場面での着用があり、格式ある場での適切な装いが求められる場面は多々あります。日本とイギリスのドレスコードの違いを理解しつつ、それぞれの文化に合ったモーニングコートの着用を心がけたいものです。

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