モービル湾の海戦

モービル湾の海戦：南北戦争における重要な海戦

1864年8月5日、南北戦争中に繰り広げられたモービル湾の海戦は、北軍が南軍の支配下にあったモービル湾の封鎖を確立し、戦争の行方に大きな影響を与えた重要な戦いでした。この海戦は、デヴィッド・ファラガット少将率いる北軍艦隊が、フランクリン・ブキャナン提督率いる南軍艦隊と、湾の入口を守る3つの砦を攻撃したことで始まりました。

戦闘の背景

モービル湾は、メキシコ湾岸における南軍の最後の重要な港であり、その閉鎖は北軍による海上封鎖の完成を意味していました。モービル市は、モービル川とテンソー川が合流してメキシコ湾に注ぐ天然の良港で、湾口にはモーガン砦、ゲインズ砦、パウエル砦という3つの砦が建設され、南軍の防衛拠点となっていました。開戦当初、南軍は海岸全体を守備するのではなく、主要な港湾に守備を集中させる戦略を採用。1862年にニューオーリンズを失った後、モービルはメキシコ湾東部で唯一守るべき主要港となりました。

戦力

南軍は、モーガン砦に46門、ゲインズ砦に26門、パウエル砦に18門の大砲を配備し、それぞれ約600人、600人、140人の兵士を配置していました。また、鉄装甲艦CSSテネシーを主力とし、CSSモーガン、CSSゲインズ、CSSセルマの3隻の砲艦で艦隊を構成していました。一方、北軍は木造艦14隻、鉄装甲モニター艦4隻に加え、陸軍部隊も投入しました。北軍艦隊の指揮官はファラガット少将で、陸軍部隊はゴードン・グレンジャー少将が率いていました。

戦闘の経過

8月5日早朝、北軍艦隊は湾への突入を開始しました。ファラガットは、機雷原を突破するために、装甲艦を先頭に、木造艦を2隻ずつロープで繋ぎ、その左舷側を進むという戦術を採用。これは、ポートハドソンでの戦いを参考にしたもので、艦船の損傷に備え、単独で動けなくなっても他艦が牽引できるという利点がありました。

しかし、装甲艦USSテクムセが機雷に触れて沈没するというアクシデントが発生。この時、機雷原の東側にいたはずのテクムセが、誤って機雷原を横切ってしまったため、乗組員114名のうち21名を除く全員が命を落としました。その後、ファラガットは「機雷がなんだ、全速前進！」という言葉を残し、機雷原を突破。この言葉は、後に有名になりました。

機雷原を突破した後、北軍艦隊は南軍艦隊と交戦。CSSテネシーは、優れた装甲で北軍の砲撃を跳ね返しましたが、北軍艦隊の数の優位と、自艦の損害により、最終的に降伏を余儀なくされました。

海戦後の展開

海戦後、北軍はゲインズ砦とパウエル砦への包囲を開始。8月8日にはゲインズ砦が、8月23日にはモーガン砦が降伏し、モービル湾全体の支配権が北軍に移りました。

戦闘の影響

この戦いの勝利により、モービルはミシシッピ川以東のメキシコ湾岸における南軍最後の重要港となり、北軍の海上封鎖が完成しました。さらに、この勝利は北部の世論を大いに高め、エイブラハム・リンカーン大統領の再選に大きく貢献しました。

戦闘の逸話

この海戦には、いくつかの有名な逸話が残されています。その一つが、ファラガットがマストに自らを縛り付けたという話です。これは、自身の安全確保というより、戦況を見守るために高い場所へ移動した際に、誤って転落するのを防ぐための処置でした。また、先述の「機雷がなんだ、全速前進！」という言葉は、困難な状況でも前進する勇気を象徴する言葉として、広く知られています。

結論

モービル湾の海戦は、南北戦争における重要な海戦の一つであり、北軍の海上封鎖を完成させ、戦争の行方に大きな影響を与えた戦いでした。この戦いは、ファラガット提督の勇敢な指揮と、北軍兵士たちの奮闘によって勝利を収めました。

また、この戦いでは、陸軍と海軍で異なる信号システムを利用していたというエピソードも残されています。戦闘中、海軍の信号システムでは情報伝達が遅れてしまう場面があり、陸軍が使用していたウィグワグ信号が使用されることになったのです。このエピソードから、当時の軍隊では、各部隊ごとに連絡手段が異なっていたことが伺えます。

この戦いは、戦場となったモービル湾に今もなお多くの難破船が眠っており、その歴史を物語っています。

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