装甲艦

装甲艦とは

装甲艦は、鋼鉄による防御が施された軍艦を指し、日本では甲鉄艦とも呼ばれます。この艦種は、装甲の存在を示すものであり、その用途や形状を指し示すものではありません。装甲艦の動力は多様であり、手漕ぎや帆走、さらには蒸気機関を用いるものもあります。また、そのサイズも数百トンから一万トンを超えるまで多岐にわたりました。19世紀末から20世紀初めにかけて進化を続け、巡洋戦艦などの新たな艦種が登場します。しかし、現代においては初期の装甲艦だけを指す場合が多いのです。

装甲艦の歴史

黎明期

装甲艦の起源は、銃火器や矢に対する防御として厚い木材を用いていた時代に遡ります。この時代の戦艦は木造が主流であり、攻城戦においても木材で構成されることが一般的でした。しかし、1853年のシノープの海戦を契機に、着発信管式の炸裂弾がその威力を示し、木造艦船の防御が不十分であることが露呈しました。このような背景から、鋼の装甲を持つ軍艦の必要性が生まれました。

19世紀の進展

世界初の装甲艦は1854年にフランスで建造されました。この艦は、主に陸上砲台との交戦を想定して設計されたものであり、その防護性能によって実戦でも成功を収めました。続いて1859年にはフランスの「ラ・グロワール」が進水し、航洋装甲艦の幕開けを告げました。イギリスもこの流れを受けて1860年に「ウォーリア」を建造し、各国はこぞって装甲艦の建造に乗り出しました。この時期、蒸気機関を備えた機帆装甲艦が多数登場し、従来の帆走装甲艦から次第に移行していきました。

20世紀への変革

20世紀初頭には、鉄鋼製の艦船を建造する技術が確立され、装甲艦の木製造船は次第に廃れていきました。日露戦争や第一次世界大戦の頃には、装甲艦はほぼ第一線から退いていましたが、一部の国家では近代化改装を行い装甲巡洋艦や海防戦艦として再運用される例もありました。特にポルトガルの装甲艦「ヴァスコ・ダ・ガマ」などは1935年まで現役でした。

日本における装甲艦

日本においては、織田信長が発注した「鉄甲船」が初の装甲艦の例とされていますが、これは防火のための装甲であり本格的な装甲艦とは異なるものでした。近代に入ってからは、金剛型コルベットなどが鋼鉄製船体への移行期において装甲艦に含まれます。

シーメンス・マルタン法と装甲艦の発展

装甲艦の製造には、高品質の金属とそれを生産する技術が鍵となりました。特にイギリスで発展したシーメンス・マルタン法は、鋼板を薄く、軽く、かつ強度を持つものにする技術を確立し、装甲艦の登場に寄与したのです。この技術革新により、イギリス船舶の造船業は発展し、1890年代までには世界での造船シェアの80%を占めるまでになりました。

結論

装甲艦は、その防御性能と戦術的優位性から多くの国で愛用され、海戦において重要な役割を果たしました。現代に至るまで、艦船製造の技術向上に支えられながら、その形を変えつつも艦艇の進化を牽引してきたことは間違いありません。

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