モーリス・グリーン (陸上選手)

モーリス・グリーン: 陸上短距離界のレジェンド



モーリス・グリーン(Maurice Greene)は、1974年7月23日アメリカ合衆国カンザス州カンザスシティに生まれ、短距離陸上選手として輝かしいキャリアを持つアスリートです。100m走の元世界記録保持者として知られ、アディダスのスポンサーシップを受け、176cm、80kgという体格を活かし、選手生活を送りました。彼のスタート方法は右前バンチスタートであり、逃げ切り型のレーススタイルは、彼の成績に大きく寄与しました。

初期の成長と苦悩



グリーンの陸上競技キャリアは、小学4年生に始まります。4歳上の兄アーネストの影響を受け、スプリントを始めた彼は、早くも若い時期に成績を残しました。しかし、高校に進学すると、成果はあまりついてこず、州大会での優勝がやっとの状態でした。高校卒業後も怪我に苦しみ、カンザスシティ短大からパーク大学に転校した彼は、ナイキ・セントラルに所属を変更しながら、選手としての生活を模索しました。

1995年、21歳のとき、全米選手権で2位に入り、イェーテボリ世界選手権への出場権を獲得しましたが、予選で敗退。その後、様々なアルバイトをしながら充実した生活を送るものの、1996年のアトランタオリンピック出場権を逃すなど、苦しい時期が続きました。この年、ドノバン・ベイリーの世界新記録を見ることで転機を迎え、ロサンゼルスで新たなコーチ、ジョン・スミスに出会います。

突然の飛躍



ジョン・スミスとの出会いは、グリーンのキャリアにおける大きな転機となりました。1997年、無名の存在ながらもアテネ世界選手権でドノバン・ベイリーを相手に9秒86で優勝し、一躍注目の選手となります。1998年の室内選手権では60mで6秒39の世界記録を樹立し、その勢いを保ったまま1999年6月にはアテネ国際グランプリで100mの新記録9秒79を達成。この走りで、彼は公式に100mを9秒7台で駆け抜けた初の選手となりました。

世界大会での活躍



翌1999年のセビリア世界選手権では、男子100mで9秒80の大会新記録をマークし、200mや4×100mリレーでも優勝し、トリプルタイトルを達成しました。続く2000年のシドニーオリンピックでは、やっと得られた金メダルを手にし、4×100mリレーでも優勝を果たし、二冠を達成しました。しかし、栄光の陰には度重なる怪我や不運が広がっていたのです。

苦悩と挫折



2001年、エドモントン世界選手権で優勝を果たした後も、彼は徐々に表彰台から遠のいていきました。2003年のパリ世界選手権では、怪我を抱えながらもワイルドカードで出場し不本意な結果に終わり、続けてバイク事故で骨折。その後、2004年には一度復活し、全米選手権で優勝しアテネオリンピックにも出場するも、銅メダル止まりとなり、次第に結果が出なくなります。2005年の全米選手権では怪我で途中棄権し、その後の世界選手権ではチームのバトンミスが影響して走る機会を失いました。

引退へ



2008年、北京オリンピックが近づく中、彼は現役引退を決意します。グリーンは自身のキャリアにおいて、速さと持続力を両立させる新しいスタイルを築き上げた陸上選手でした。彼は、スプリント技術を駆使しながらも、怪我や不運に対する苦難を克服し、数々の栄光と挫折を経験しました。モーリス・グリーンの名は、陸上競技史において色あせることがないでしょう。彼の記録、特に100mでの9秒79は、今後も多くの選手たちにとっての目標であり続けるのです。

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