ヤコポ・ストラーダの肖像

ヤコポ・ストラーダの肖像：多才な宮廷人の姿

ティツィアーノ・ヴェチェッリオによって1567年から1568年に描かれた油彩画『ヤコポ・ストラーダの肖像』は、ルネサンス期のヴェネツィア派を代表する作品の一つです。この絵画は、当時、多岐にわたる才能を発揮した人物、ヤコポ・ストラーダの姿を捉えています。現在はウィーンの美術史美術館に所蔵されており、その卓越した筆致と人物描写は、今日でも多くの人々を魅了しています。

ヤコポ・ストラーダとは

ヤコポ・ストラーダは、16世紀において最も多才な人物の一人とされています。彼は画家、建築家、金細工師、考古学者、文献学者、美術収集家、そして美術商という、非常に多様な顔を持っていました。その多才さから、彼はアルブレヒト5世（バイエルン公）の芸術顧問を務めた後、法王庁に仕え、1557年からはハプスブルク家に雇用されました。ストラーダは、特に古美術に関する卓越した鑑識眼を持ち、雇い主にとって非常に重要な美術品の買い付け人でした。

絵画の詳細

この肖像画では、ストラーダは自身の書斎に座り、その知識を示す様々な事物に囲まれています。彼は金鎖を身に着けていますが、これは1566年に神聖ローマ皇帝マクシミリアン2世から「Antiquarius Caesareus（帝国の古物収集家）」に任命された際に与えられたものです。この金鎖は、彼の宮廷人としての地位を象徴しています。さらに、彼の剣と肩から垂れる毛皮は、彼の富裕さを表しています。

画面右上には、次のような銘文が記されています。「JACOBVUS DE STRADA CIVIS ROMANVS CAESS. ANTIQVARIVS ET COM. BELIC. AN: AETAT: LI: et C.M.D.L. XVI」。これは、「ヤコポ・ストラーダ、ローマの市民、（神聖ローマ）帝国の古物収集家兼宰相、1566年に51歳」という意味です。また、画面左上には「TITIANVS F（ECIT）」と署名されており、テーブル上の文字には「Titian Vecellio Venezia」と記されています。

この絵画は、ストラーダの知性と多才さを、具体的な事物と記銘によって見事に表現しています。ティツィアーノの卓越した描写力と色彩感覚が、ストラーダの人物像を際立たせています。

作品の歴史

この作品は、1世紀後の1659年と1673年に、ダフィット・テニールス（子）によって、レオポルト・ヴィルヘルム大公の絵画コレクションの目録である『絵画の劇場』に記録されました。テニールスは、この作品を含む大公のコレクションを描いたことでも知られています。

ギャラリー

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参考文献

『ウイーン美術史美術館 絵画』、スカラ・ブックス、1997年　ISBN 3-406-42177-6
Urbanissime Strada: Jacopo Strada and Cultural Patronage at the Imperial Court, by Jansen, Dirk Jacob, 2015

外部リンク

* 美術史美術館公式サイト、ティツィアーノ『ヤコポ・ストラーダの肖像』 (英語)

この絵画は、ルネサンス期の人物像を理解する上で重要な作品であり、ヤコポ・ストラーダの多才さと、ティツィアーノの芸術的才能が融合した傑作と言えるでしょう。

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