ヤシ市電

ヤシ市電（Tramvaiul din Iaşi）

ヤシ市電は、ルーマニアのヤシ市内で運行される路面電車で、1900年に開通した非常に長い歴史を持つ公共交通機関です。現在、ヤシ市の全株を保有するヤシ公共交通会社（Compania de Transport Public Iași SA、CTP Iaşi）によって運営されています。ヤシ市電は、地域住民の日常の移動手段として重要な役割を果たしています。

歴史

ヤシ市における路面電車の開通は、1900年3月1日であり、これは1898年に認可されたプロジェクトを受けたものです。当初、ドイツのベルリンに本社を置くAEGが建設と運営を行っており、開通時から広範な路線網が存在していました。1901年には路線を伸ばし、総延長が17.3kmに達し、当時のルーマニアにおいて最大規模の路面電車になったのです。

1914年、第一次世界大戦に伴い、AEGとの契約は解消され、ヤシ市電は国営の路線に変更されました。その後1920年からはヤシ市の運営下に置かれ、さらなる路線網の拡張が図られました。また、この時期にはヤシ市電の工場で自社製造の車両も生産されていました。しかし、第二次世界大戦が勃発すると、ヤシ市電も大きな被害を受け、その復旧に忙しく費やされました。

戦後、共産主義体制が確立されると、公共交通は何度かの再編成を経て、1979年から1990年までヤシ県公共輸送公社（Întreprinderea Judeţeană de Transport Local、I.J.T.L.）の運営下に置かれました。この時代、都市の発展や工業化に伴い、公共交通への需要は増加し、路面電車網も拡大しました。特に、1980年代以降は新しい住宅地が開発され、工業地帯との連携を強化するための路面電車路線の増設が行われました。

民主化以降、ヤシ市電は株式会社による運営に移行し、2016年からはヤシ公共交通会社が市電やバスの運営を担当しています。この時期は、老朽化した施設の修復や、ヨーロッパ各国からの中古車両の導入により、車両の近代化も並行して進められました。また、2003年にはスイスの経済関係国家事務局との間に近代化協定が結ばれ、一部の車両がスイスから譲渡されることとなりました。

運行

2022年現在、ヤシ市電は9つの系統が運行されており、丘陵地帯を走るため勾配の急な区間が多いのが特徴です。運賃は2018年以降、ゾーン制の料金体系を導入しており、基本運賃は3レイで、有効期限は2時間です。運賃の支払い方法は、現金のほか、オンライン購入や電子支払いにも対応しています。また、2023年からはリサイクル可能な粗大ごみを収集するための専用列車も運行されています。

車両

2022年には、ヤシ市電では様々な車両が運行されています。特に、民主化後はドイツやスイスからの譲渡車両が増え、2020年代以降は欧州連合からの支援を受けて超低床電車の導入が進んでいます。さらに、ヤシ市電の車庫には開業当初の車両も含めた多くの歴代車両が保管されています。これらの車両は、ヤシ市電の歴史を物語る貴重な存在として、地域の人々に愛されています。

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