ヤッシー＝キシニョフ攻勢

ヤッシー=キシニョフ攻勢

ヤッシー=キシニョフ攻勢（ヤッシー=キシニョフ作戦）は、1944年8月20日から29日までの間、ソ連軍がルーマニア東部で展開した大規模な攻撃作戦です。この作戦の目的は、ドイツ軍とルーマニア軍で構成される南ウクライナ軍集団に対抗し、モルダビア・ソビエト社会主義共和国を解放した上で、バルカン半島への進出路を確保することでした。また、作戦名の由来は、ルーマニアの主要都市ヤシとキシナウのロシア語名が结合したものです。

背景

この攻勢の前には、1944年の初めに行われた第1次ヤッシー=キシニョフ攻勢がありましたが、こちらは失敗に終わりました。しかし、ドイツ軍はこの時期に装甲部隊を他の戦線に引き抜かれ、南ウクライナ軍集団は戦力が低下していました。攻勢に先立ってソ連軍は入念に偽装を行い、部隊の動きがドイツ軍に察知されないよう努めました。具体的には無線封止や偽装用の遮蔽物の設置が行われ、敵軍に混乱を与えました。

ソ連軍の戦略

ソ連軍の計画は、ウクライナ方面軍がドイツ軍の両翼を包囲することを基本としました。攻撃が始まると、ソ連軍はあっという間にドイツ軍の戦線を突破し、深い侵攻を果たしました。ドイツ軍第6軍は連日、深さ100km以上にわたって包囲され、ほとんどが孤立を余儀なくされました。攻撃初日におけるソ連軍の進撃の速さは、散発的な抵抗に直面したものの、ほぼ全体が成功していました。

ドイツ・ルーマニア軍の対応

ドイツとルーマニア側は防衛を試みましたが、8月23日にはルーマニア国王の政変が発生し、イオン・アントネスク政権が崩壊しました。その後、ルーマニア軍はかつての敵であったソ連軍と共闘する形となり、ドイツ軍部隊は大損害を被りました。特に、プロイェシュティ油田の防衛に失敗し、ルーマニア軍は50,000名のドイツ兵を捕虜としました。

結果と影響

ヤッシー=キシニョフ攻勢は、ソ連軍にとっては戦略的な成功を収めましたが、ドイツ軍には甚大な損失をもたらしました。約200,000名のドイツ兵が戦闘で失われ、南ウクライナ軍集団は崩壊しました。この攻勢によってルーマニアは連合国側に立場を変更し、戦後のヨーロッパにおける勢力図にも影響を与えることとなりました。戦闘を経て、ソ連軍はユーゴスラビアやギリシャ方面への進撃を開始し、欧州における戦局は大きく変化しました。ヤッシー=キシニョフ攻勢は、モルドバにおけるソ連の支配強化へもつながり、ソ連による大規模な軍事行動の一環として重要な意味を持つものとなりました。

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