ヤマハ・ボクスン

ヤマハ・ボクスン(box'n) CQ50E：メットインスクーターの先駆け

ヤマハ発動機がかつて製造・販売していたスクーター「ボクスン(box'n)」は、1985年発売のCQ50E型原動機付自転車です。現在では生産を終了していますが、日本のスクーターの歴史において重要な位置を占めるモデルとして知られています。その最大の特徴は、日本で初めてヘルメットを収納できるトランク、いわゆる「メットイン」機能を搭載していた点です。

ボクスンのエンジンは、ヤマハの人気スクーター「ジョグ」と共通の空冷2サイクル単気筒エンジンで、最高出力は5.8psでした。当時としては一般的なスペックでしたが、ボクスンは他のスクーターとは異なるデザインが採用されていました。直立シリンダー構造のエンジンにより、車体は若干腰高なスタイルとなり、フルフェイスタイプのヘルメット収納には苦労する面もあったとされています。

この腰高なデザインや収納スペースの制約から、ボクスンは販売面で大きな成功を収めたとは言えませんでしたが、その革新的なメットイン機能は、後のスクーター開発に大きな影響を与えました。盗難防止や雨天時のヘルメット保管の利便性といったメットインのメリットは、多くのライダーに支持され、その後、各メーカーから続々とメットイン機能搭載スクーターが登場するきっかけとなりました。結果として、ボクスンは「メットインスクーターの元祖」と称されるまでになり、現代のスクーターデザインに多大な影響を与えたモデルと言えるでしょう。

ボクスンの特徴的なデザインと、時代を先取りした機能は、スクーターの進化における重要なマイルストーンとして記憶されています。CMには当時人気のあったウガンダ・トラが出演しており、話題性も高かったようです。販売面では必ずしも成功とは言えませんでしたが、ボクスンの開発によって培われた技術やコンセプトは、その後ヤマハ発動機が開発する多くのスクーターに受け継がれ、現代のスクーターの快適性や利便性に貢献していると言えるでしょう。

今日、多くのスクーターがメットイン機能を標準装備していますが、その始まりはボクスンにあったと言っても過言ではありません。このモデルは、単なるスクーターではなく、日本のスクーター業界に新たな方向性を示した先駆的な存在だったと言えるでしょう。 ヤマハ発動機のコミュニケーションプラザには、貴重なボクスンが展示されており、往時のデザインや技術を直接目にすることができます。

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