ヤマハ・FJ

ヤマハFJは、ヤマハ発動機が海外市場向けに製造・販売していた大型バイクです。その歴史は、1984年に登場したFJ1100から始まります。1097ccの空冷DOHC4バルブ直列4気筒エンジンを搭載し、最高出力125psを誇るこのモデルは、当時世界最速のグランドツーリングスポーツを目指して開発されました。

特徴的なのは、長距離ツーリングを快適にこなせるよう設計された点です。やや長めのホイールベースと空力性能を重視したハーフカウルは、ライダーとパッセンジャー、そして荷物を満載しての快適な長距離走行を可能にしました。5速リターン式トランスミッションも、長距離走行における疲労軽減に貢献していたと言えるでしょう。

1986年には、排気量を1188ccに拡大したFJ1200へとモデルチェンジします。外観は、ウインカーが外付けからアッパーカウル一体式に変更され、より洗練された印象となりました。そして、最高出力は130psに向上。これは当時の国産空冷モデルとしては最強クラスの数値であり、その圧倒的なパワーは多くのライダーを魅了しました。

そして1991年、FJ1200は日本国内での販売が開始されます。国内販売に際しては、自主規制値への適合のため、最高出力が97psに落とされましたが、それでも十分な動力性能を備えており、日本の道路環境においても全く不足を感じさせない仕上がりとなっていました。

さらに、同年には国産二輪車としては画期的な装備となるアンチロック・ブレーキ・システム（ABS）を搭載した「FJ1200A」がラインナップに加わります。安全性を重視するライダーにとって、これは大きな魅力であったと言えるでしょう。ABS搭載モデルは、標準モデルより15万円高価でしたが、その価値に見合うだけの性能を備えていました。

FJ1200シリーズは、その後生産を終了しますが、その心臓部である空冷直列4気筒エンジンは、1994年に登場したXJR1200へと受け継がれ、その力強い鼓動は新たなモデルで息づきました。また、高速ツアラーとしてのFJのコンセプトは、2001年に発売されたFJR1300へと受け継がれています。

現在では生産されていないFJ1200ですが、その高い完成度と魅力的なデザインから、根強い人気を誇っています。メーカー公認のオーナーズクラブ「FJオーナーズクラブ」が存在するのも、このモデルが多くのライダーに愛されている証と言えるでしょう。長距離ツーリングを快適に楽しめる性能、そして力強いエンジンサウンドは、多くのライダーの心に深く刻まれているに違いありません。FJ1200は、日本のモーターサイクル史において重要な位置を占める一台と言えるでしょう。

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