ヤマハ・FZ750

ヤマハFZ750：革新的なエンジンとスタイリングを誇る名車

ヤマハ発動機が1985年から1997年まで製造販売した大型オートバイ、FZ750。その魅力は、世界初の技術とデザイン、そして数々のレースでの活躍にあります。本稿では、FZ750と、その派生モデルである白バイ仕様のFZ750Pについて解説します。

画期的なエンジンとシャシー

FZ750の最大の特徴は、世界初の5バルブDOHC直列4気筒エンジンです。ヤマハはこのエンジンを「GENESIS」と名付けました。シリンダーを45度前傾させ、キャブレターとエアボックスを一直線に配置する独特のレイアウトは、吸気効率の最適化と低重心化を実現。これにより、優れた出力特性と高い操縦安定性を両立しました。750ccクラスで当時最軽量級だった車体は、軽快な走りを可能にしていました。

この革新的なエンジンは、FZR750、FZR1000、そしてサンダーエースなど、後続のヤマハスーパースポーツモデルにも改良を加えながら搭載され、長年にわたってヤマハの主力エンジンとして活躍しました。

世界中で愛されたスタイリングとカスタマイズ

FZ750は日本国内での販売期間は短かったものの、海外市場では扱いやすいベーシックスポーツとして人気を博し、約3万9000台が製造販売されました。その独特のスタイリングは、現在でも根強い人気があり、多くの愛好家によってカスタマイズベースとして愛用されています。特に、エディ・ローソンが1986年のデイトナ200で優勝した際のレーシングマシンを模したカスタマイズは、人気が高いです。

警察車両としての活躍：FZ750P

FZ750は警察車両仕様のFZ750Pとしても世界中で活躍しました。1997年まで生産されたFZ750Pは、様々な仕様が存在し、シンプルなネイキッドモデルから、フルカウルを装備したモデルまで、多様なニーズに対応していました。フロントタイヤサイズやメーター、変速段数なども仕様によって異なっています。日本国内のみならず、海外への輸出も多数行われました。

過酷なレースへの挑戦

FZ750のエンジンは、過酷なダカール・ラリーにも投入されました。1986年、フランスのヤマハ輸入代理店「ソノート・ヤマハ」が、XT600テネレのフレームにFZ750エンジンを搭載したマシン「FZT750テネレ」を製作し、参戦。重量増と燃費悪化というハンデを背負いながらも12位という好成績を収めました。翌1987年には排気量を912ccに拡大した「FZT920テネレ」も投入され、7位という結果を残しています。

レースで鍛えられた技術

FZ750は、市販モデルをベースにしたレースマシンも開発されました。AMAスーパーバイク選手権のデイトナ200マイルに参戦した「FZ750 OU45」は、エディ・ローソン選手によって優勝に貢献しました。また鈴鹿8時間耐久レースに参戦した「FZ750 OW74」は、高度な技術が惜しみなく投入されたマシンとして知られています。これらのレース活動を通じて得られた技術は、市販モデルの改良にもフィードバックされ、FZ750の進化に貢献しました。

モデルバリエーション

FZ750は、国内仕様と輸出仕様、そして警察車両仕様のFZ750Pと、様々なバリエーションが存在しました。国内仕様は1987年に販売終了しましたが、輸出仕様は1994年まで、FZ750Pは1997年まで生産されました。年式による仕様変更も多岐に渡り、ヘッドライト、タイヤ、ブレーキキャリパー、マフラー、カウルなど、多くの部分が変更されています。

まとめ

FZ750は、革新的なエンジンと優れた走行性能、そして独特のスタイリングを兼ね備えた、ヤマハを代表する名車の一つです。警察車両やレースマシンとしての活躍も記憶に新しく、現在でも多くのファンから愛されています。その歴史と技術的にも貴重な存在として、これからも語り継がれていくことでしょう。

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