ヤマハ・FZR250

ヤマハFZR250：進化を遂げたレーサーレプリカの系譜

ヤマハ発動機から発売されたFZR250は、人気のレーサーレプリカモデルとして、1986年から1994年まで製造されました。ベースモデルとなったFZ250を継承しつつ、特徴的な丸型2灯ヘッドライトとフルカウルを纏い、スポーティな走りを追求した一台として高い人気を博しました。その歴史は、幾度かのマイナーチェンジとフルモデルチェンジを経て、技術革新と性能向上が重ねられた過程でもあります。

FZR250 (2KR)：シリーズの幕開け

FZR250の初代モデル(2KR)は、1986年12月に登場しました。FZ250フェーザーをベースに、前後17インチホイールへの変更と、当時としては先進的な丸目2灯フルカウリングを採用。耐久レーサーYZF750をイメージしたデザインは、当時多くのライダーを魅了しました。エンジンはFZ250と共通ながら、最高出力回転数を向上させ、発電能力も強化。また、TZR250(1KT)と同様の大径フローティングディスクブレーキや、軽量化と剛性向上を両立させたリアサスペンションなどを採用することで、走行性能の向上も図られています。メーターもRZ250Rを彷彿とさせる3連メーターを採用するなど、細部にまでレーシングテイストが盛り込まれていました。

FZR250 (3HX)：EXUP搭載による進化

1988年には、FZR250 (3HX)が発売されました。このモデルでは、4ストローク250ccとしては初となる排気デバイス機構EXUPを搭載。これにより、特定回転域でのトルクの落ち込みを抑制し、スムーズな加速を実現しました。また、リアサスペンションにFZR400(1WG)と同等のボトムリンク機構を採用するなど、足回りの強化も図られています。これにより、高速走行時の安定性と接地感が向上し、より洗練された走行性能を獲得しました。カラーリングも複数展開され、バリエーション豊かなラインナップが魅力でした。限定カラーモデルも存在し、コレクターズアイテムとしても人気を集めています。

FZR250R (3LN1)：フルモデルチェンジによる革新

1989年には、FZR250シリーズ初のフルモデルチェンジが行われ、FZR250R (3LN1)が登場しました。車名に「R」が付いたのは、このモデルからで、YZFやFZR750R(3FV1)を彷彿とさせるデザインが特徴です。最大の特徴は、アルミデルタボックスフレームの採用です。これにより、軽量化と高剛性化が実現し、ハンドリング性能の大幅な向上に繋がりました。エンジンも高回転化され、最高出力と最大トルクの発生回転数が増加。フリクションロスの低減やピストン冷却システムの採用など、内部構造も見直されています。ブレーキシステムも、フロントダブルディスク化されるなど、大幅な性能向上を遂げました。

FZR250R (3LN3/3LN5/3LN6/3LN7)：さらなる熟成と40馬力自主規制への対応

1990年モデル(3LN3)では、FZR400RRと同じデザインを採用。プロジェクタータイプのヘッドライトや、フレーム剛性の向上など、更なる性能向上と洗練されたデザインが実現しました。1991年モデル(3LN5)では細かい改良が加えられました。1993年モデル(3LN6)では、40馬力自主規制に対応。FZX250 ZeaL(3YX)のエンジンをベースに、バルブスプリングなどの変更を行い、トルク特性の向上を実現しました。最終モデルとなる1994年モデル(3LN7)は、カラーリング変更のみで、基本的な仕様に変更はありませんでした。

FZR250の系譜とその後

FZR250は、ヤマハが国内生産した最後の250ccレーサーレプリカモデルとなりました。2010年以降、ヤマハは400cc以下のバイクの海外生産を進めたため、国内生産モデルとしては、FZR250が最後の250ccレーサーレプリカとなりました。その後、2014年にYZF-R25が発売されるまで、このクラスのレーサーレプリカモデルは空白期間となりました。FZR250は、その高い完成度と、国内生産最後の250ccレーサーレプリカという歴史的意義から、今でも多くのファンに愛されるモデルとなっています。

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