ヤマハ・FZR400

ヤマハFZR400シリーズ：レーサーレプリカの系譜

ヤマハ発動機が1986年から1994年にかけて製造したFZR400は、同社の技術力を象徴するレーサーレプリカモデルです。XJ400Zを進化させたFZ400Rをルーツに持ち、水冷4サイクル直列4気筒エンジンを搭載。その高い性能と洗練されたデザインで、多くのライダーを魅了しました。

FZR400(1WG) (1986年)

初代FZR400は、コンパクトなテールカウルと独創的なデザインが特徴です。エンジンの45度前傾レイアウトにより、エアクリーナーとダウンドラフトキャブレターをエンジン真上に配置。このレイアウトのために、燃料タンク上部をエアクリーナーボックスと燃料タンクで構成し、樹脂製カバーで覆うという独特の構造を採用しました。そのため、当時一般的だったマグネット式のタンクバッグが使用できない点が、一部で不評でした。

FZR400R(2TK) (1987年)

1987年には、レースベースの限定車FZR400R(2TK)が登場。シングルシート、アルミ製タンクカバー、クロスミッション、強化クラッチ、ピストンオイルクーラーを装備した豪華仕様で、価格は通常モデルより20万円高い89万円でした。このモデルでは、排気デバイスEXUPが初めて採用されました。

北米市場向けモデル (1988年)

1988年には、北米市場向けにFZR400(3BF)と、カリフォルニア州向けにEXUP搭載のFZR400S(3FH)が発売されました。FZR400Sは、FZR400(1WG)をベースにシングルシートカバーを追加した一人乗りモデルです。

FZR400(3EN1)/FZR400R(3EN2) (1988年)

1988年には、FZR400(3EN1)とFZR400R(3EN2)が発売。3EN1は、2TKに匹敵する装備を備え、新設計エンジンとEXUPを標準装備しました。F.A.I（フレッシュ・エアー・インテーク）の導入により、エンジンの吸気効率が向上。また、楕円型断面のステンレスマフラーも特徴です。3EN1は、輸出仕様のFZR600開発のベースとなり、そのデザインは1999年モデルまで使用されました。3EN2は、デルタボックススイングアームを採用し、タイヤ交換を容易にする後輪支持構造が特徴です。初代モデルのエアクリーナーボックスと燃料タンクの配置は継承されましたが、マグネット式タンクバッグが使用できるよう改善されました。

FZR400RR(3TJ/4DX) (1989年)

1989年12月、デザインを一新したFZR400RR(3TJ)が登場。デルタボックスフレームとエンジンは新設計となり、エンジンの前傾角度は45度から35度に変更。ホイールは前17/後18インチから前後17インチに変更され、タイヤサイズも変更されました。ヘッドライトは二灯式プロジェクタータイプとなりました。

1990年には、SP仕様であるFZR400RR-SP(3TJ-2)が発売。クロスミッション、強化クラッチ、水冷式オイルクーラーなどを装備しました。1992年には、イギリスとフランス向けに馬力規制のないフルパワー版FZR400RR(4DX)が発売されました。その後、国内の自主規制により、1992年12月のモデル(3TJ-6)から最高出力が53psに制限されました。1994年2月、カラーリング変更した最終モデルが発売され、FZR400シリーズの歴史に幕を閉じました。

FZR400シリーズの系譜

FZR400シリーズは、ヤマハのレーサーレプリカモデルの中でも、特に高い人気を誇りました。その高い性能と洗練されたデザインは、多くのライダーを魅了し、日本のバイク史に大きな足跡を残しました。その進化の過程は、ヤマハの技術力の高さ、そして時代の変化を反映するものです。各モデルの特徴を比較検討することで、その魅力をより深く理解することができます。

もう一度検索