ヤマハ・MT-09 トレーサー

ヤマハMT-09 TRACERシリーズの進化：スポーツとツーリングの融合

ヤマハ発動機が製造するMT-09 TRACERは、スポーツ走行とツーリング性能を両立させた大型バイクとして人気を博しています。2015年の発売以来、モデルチェンジや名称変更を繰り返し、常に進化を遂げてきました。本記事では、その歴史と各モデルの特徴を詳しく解説します。

2015年：MT-09 TRACERの誕生

2015年2月、MT-09をベースに開発されたMT-09 TRACERが発売されました。大型風防やトラクションコントロールシステムの搭載など、ツーリング性能を重視した設計が特徴です。日本や欧州ではMT-09 TRACER、米国ではFJ-09として販売されました。これはヤマハがプラットフォームを共有したバリエーション展開を拡大する戦略の一環として位置づけられていました。

2017年：モデルチェンジと改良

2017年2月、MT-09 TRACERはモデルチェンジを行いました。エンジンはMT-09 ABSと共通化され、アシスト＆スリッパークラッチが追加されました。外観は先代モデルと大きな違いはありませんでしたが、内部機構の改良が図られました。

2018年：TRACER900への名称変更とマイナーチェンジ

2018年4月、MT-09 TRACERはTRACER900へと名称が変更され、マイナーチェンジが行われました。開発コンセプトは「Two Sides of the Same Coin： Sports and Travel」と銘打たれ、スポーツ性能とツーリング性能の両立が追求されました。新型フロントスクリーンやハンドルバーの改良、リアアームの延長などにより、ツーリング時の快適性が向上しています。同年6月には、さらにツーリング性能を高めた上級モデルTRACER900 GTも発売されました。TRACER900 GTはフルアジャスタブルフロントフォークやクルーズコントロールシステムなどを搭載していました。

2021年：フルモデルチェンジとTRACER9への進化

2021年、TRACERシリーズはフルモデルチェンジを受け、モデル名をTRACER9へと変更しました。コンセプトは「Multirole fighter of the Motorcycle」となり、多用途性をさらに追求した設計となっています。888ccに排気量アップした水冷並列3気筒エンジン、60mm延長されたリアアーム、新開発の6軸IMUによる高度な電子制御システムなど、多くの改良が加えられました。TRACER9は上級グレードのTRACER9 GTのみが販売されることとなりました。

TRACER9の改良点詳細

エンジン排気量拡大: シリンダーボアは維持しつつ、ピストンストロークを延長することで排気量を888ccに拡大し、低中速トルクの向上を実現。
専用リアアーム: MT-09より60mm延長されたリアアームにより、3バッグ搭載時でも安定した走行性能を実現。ピボット部構造の変更とダンパー内蔵サイドケース取り付け用ステーにより、サイドケース装着時の安定性も向上。
シート高調整: メインシートの高さを調整可能にすることで、より多くのライダーに対応可能に。ローポジション820mm、ハイポジション835mm。
6軸IMUと高度な電子制御システム: 新開発の6軸IMUとECUにより、トラクションコントロールシステム、スライドコントロールシステム、リフトコントロールシステムといった高度な電子制御システムが搭載され、安全性の向上と走行性能の最適化を実現。
コーナリングランプ: バンク角に応じて点灯するコーナリングランプを採用。
フルカラーTFTメーター: 3.5インチのフルカラーTFTメーターを左右に採用し、各種情報を分かりやすく表示。

まとめ

MT-09 TRACERシリーズは、発売以来、スポーツ性能とツーリング性能の両立を追求し、常に進化を続けています。TRACER9は、その集大成と言えるモデルであり、多様なニーズに対応できる高いポテンシャルを秘めています。それぞれのモデルが持つ特徴を理解することで、最適な一台を選ぶことができるでしょう。

もう一度検索