ヤマハ・R1-Z

ヤマハR1-Z：2ストローク時代の異端児

1990年代、レーサーレプリカが全盛だった250ccクラスのオートバイ市場において、ヤマハ発動機は異色のモデルを発表しました。それが、R1-Zです。その名は、ヤマハの伝統モデルRZと国道1号線（Root1）を組み合わせた造語で、オートバイ雑誌の広告では、国道1号線浜名バイパスの浜名大橋が撮影ロケ地として使われるなど、ブランドイメージの確立に力を入れていました。

ライバル車種との違い

当時の250ccロードスポーツは、高出力・軽量化を追求したレーサーレプリカが主流でした。ホンダNSR250RやスズキRGV250Γといった、V型エンジンにアルミフレームという組み合わせが一般的でした。しかし、R1-Zは、これらとは一線を画す存在でした。

R1-Zは、TZR250(1KT)と共通のエンジンをベースとしつつ、パラレルツインの2ストロークエンジンを搭載。フレームやスイングアームはスチール製トラス構造を採用していました。TZR250のエンジンをベースにしながらも、キャブレター口径の変更や点火時期の調整、ギア比の変更など、街乗りでの扱いやすさを重視したセッティングが施されていました。絶対的な最高速よりも、扱いやすさと爽快な加速感を優先した設計思想が特徴的です。また、2気筒分のサイレンサーを右側に配置するなど、個性的なスタイリングも魅力の一つでした。

マイナーチェンジと生産終了

R1-Zは、1999年の2ストローク250ccバイクの生産終了まで、マイナーチェンジを繰り返しながら販売されました。主な変更点は、馬力規制に対応したCDIの変更、ハザードランプスイッチの追加、フレームの補強、ラジアルタイヤの採用、サスペンションとシートの改良などです。セルスターターは搭載されていませんでした。また、多くの部品はFZRなどの他車種と共通化されており、RZのように全ての部品が専用設計というわけではありませんでした。

モデルバリエーション

R1-Zは、生産期間中に3度のモデルチェンジが行われ、それぞれ異なる型式番号が割り当てられています。

3XC1 (1990年6月発売): 3XC-000101～ カラーバリエーション：白（シルキーホワイト）、黒（ブラック2）、赤（ビビッドレッドカクテル1）
3XC2 (1991年9月発売): 3XC-030101～ カラーバリエーション：白（シルキーホワイト）、黒（ブルーイッシュブラック2）
* 3XC3 (1992年12月発売): 3XC-040101～ カラーバリエーション：白（ブルーイッシュホワイトカクテル1）、ガンメタリック（フロストシルバー）

フレーム番号でそれぞれのモデルを判別できます。

ヤマハRシリーズの系譜

R1-Zは、ヤマハの伝統的な2ストロークパラレルツインエンジンを搭載した「Rシリーズ」の最終モデルでした。R1、R2、R3、RX、RD、RZと続く系譜を受け継ぎ、Rシリーズの歴史に幕を閉じました。

まとめ

R1-Zは、レーサーレプリカ全盛期にあって、扱いやすさと爽快な走りを両立した個性的なモデルでした。2ストロークエンジンの魅力と、ヤマハの技術が凝縮された、希少性の高いオートバイと言えます。その独特のデザインと乗り味から、現在でも根強い人気を誇っています。

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