ヤマハ・Sシリーズ

ヤマハ Sシリーズ：ピアノサウンドに特化したシンセサイザーの系譜

ヤマハSシリーズは、同社のシンセサイザーラインナップの中でも、特にピアノサウンドに焦点を当てたシリーズです。その歴史は、1999年に発売されたS80から始まり、2009年のS70 XS/S90 XSまで、多岐にわたるモデルが展開されました。

シリーズの特徴

Sシリーズの大きな特徴は、そのサウンドへのこだわりです。特に、ピアノ音色の表現力には力が注がれており、プロの演奏家からDTMユーザーまで、幅広い層に支持されました。また、多くのシンセサイザーがシルバーの筐体を採用する中で、Sシリーズは一部モデルを除き、ブラックの筐体を採用している点も特徴的です。Sシリーズのシーケンサーは、原則としてプレイバック専用であり、本格的な伴奏データの作成はPC上で行うことが想定されています。

シリーズの分類

Sシリーズは、その開発コンセプトや機能によって、大きく3つのカテゴリーに分類することができます。

狭義のSシリーズ: S80、S30の2機種を指し、プロフェッショナル向けの仕様を備えています。特に、プラグインボードによる拡張性が特徴です。
S90シリーズ: MOTIFシリーズをベースに開発されたS90、S90 ES、S70 XS、S90 XSを指します。高音質なピアノ音色と、高度な演奏表現を可能にする機能が特徴です。
S0シリーズ: DTM用途に特化したS03、S03s、S03BL、S03SL、S08を指します。プラグインボードによる拡張はできませんが、手軽に高品質なサウンドを楽しめる点が魅力です。

各モデルの詳細

S80: シリーズの初代モデル。88鍵AE鍵盤を採用し、2枚のプラグインボードを装着可能。プロユースを想定したモデルでありながら、そのピアノ音色のクオリティはデジタルピアノとしても十分なレベルでした。
S30: 61鍵LC鍵盤を採用。S80の音源部をベースに、プラグインボードスロットを1つに削減したモデル。S80よりも小型軽量化され、持ち運びやすくなりました。競合機種との関係で、S80より先に生産完了となりました。
S90: 88鍵バランスドハンマー鍵盤を採用。MOTIF8をベースに、シーケンサーとサンプラー機能を省略し、波形容量を増やしたモデル。S80/S30との互換性はありません。
S03: 61鍵盤を採用。XGフォーマットに対応した音源を搭載し、DTM用キーボードとしても利用可能。プラグインボードは非対応。
S03s: S03のシルバーバージョン。Hello!Musicバンドル版として発売された。
S08: 88鍵バランスドハンマー鍵盤を採用（アフタータッチは非対応）。S03をベースにピアノタッチ鍵盤を搭載。ロータリーエンコーダーやUSB端子など、機能面も強化。
S03SL: S03のシルバーモデル。S03sの単体発売版。
S03BL: S03のブラックモデル。2004年に付属品を一部変更して再発売された。
S90 ES: S90の後継機。MOTIF ESをベースとし、3基の拡張スロットを搭載。ベロシティスイッチによるダイナミックな音色変化や、ダンパーレゾナンスエフェクトなど、高度な表現力を実現。
S70 XS / S90 XS: S90ESの後継機種。S70 XSが76鍵、S90 XSが88鍵のバランスドハンマー鍵盤を搭載。MOTIF XS直系の音色を搭載し、さらに進化したピアノサウンドを実現。

シリーズの終焉とその後

2010年代以降、SシリーズはMOTIF XFシリーズに相当する後継機種が発表されることなく、ヤマハCPシリーズに統合される形でその歴史に幕を閉じました。しかし、Sシリーズが築き上げてきたピアノサウンドへの追求は、その後のヤマハシンセサイザーに大きな影響を与えています。

関連情報

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* Modular Synthesis Plug-in System

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