XGフォーマット

XGフォーマットとは

XGフォーマットは、1994年にヤマハが提唱したMIDI規格です。これは、同社の音源モジュールやシンセサイザー間で、音色配列、エフェクト、音色エディットといったパラメータを統一し、伴奏データをほぼ同一の音色で再生できるようにすることを目的としていました。

概要

ヤマハは、GM（General MIDI）規格を独自に拡張し、XGフォーマットを制定しました。これにより、480以上の豊富な音色、詳細な音色編集機能、3種類以上のエフェクト、ダイナミックフィルター、外部入力への対応などが実現しました。規格のハードルは当時としては高く、1997年には、より軽量な「XG lite」も登場しています。これは、小型の電子キーボードなどの安価な製品でもXG音源を搭載できるようにするためのもので、一部の機能やパラメータに制限がありますが、XGとの互換性を持たせるためのものでした。2001年には、XGとの親和性を高めた「XGlite Ver2.0」が制定されています。「XG」の由来は公式には発表されていません。

XGフォーマットの基本思想

XGフォーマットの基本思想には、以下の3つがあります。

互換性: XG対応データはXG対応機器であれば、異なるモデル間でも再生が可能。GMとの上位互換性も持ち、GM対応の伴奏データも正しく再生可能。
適応性: 音色数や変更方法が詳細に規定されているものの、全ての機能を網羅する必要はなく、各モデルの性能や価格帯に応じた再生が可能。
拡張性: 製品開発に合わせてフォーマット内容を柔軟に拡張可能。実際に、上位機種が登場するたびに新しいエフェクトや音色、機能が追加されている。

GMとの上位互換性

XGフォーマットは、GMとの上位互換性を持ち、GMで規定された128音色に加え、バンクセレクト機能を用いて大幅に音色数を増やしています。バンクセレクトLSBで基本音色のバリエーションを配置し、バンクごとに性格を設定することで検索を容易にしました。また、バンクセレクトMSBで効果音やドラムパートへの切り替えも可能です。上位機種のデータを下位機種で再生する場合、ない音色はGMの基本音色で代替されます。

エフェクトと外部入力

XGフォーマットでは、エフェクトの種類や結線、パラメータやコントロール方法も規定されており、高度な要求にも応えられます。グラフィックイコライザーで曲調に合った雰囲気を作り出すことも可能です。外部からの信号も受け付け、エフェクトをかけ、音源内の音色と同様にコントロールできます。これにより、カラオケやバンド演奏など、幅広い用途に対応できます。

GSフォーマットとの関係

XGフォーマットは、ローランド社のGSフォーマットとは直接的な互換性はありません。しかし、多くのXG対応音源には、GS互換モード（TG300-Bモード）が搭載されており、GS対応のMIDIデータをある程度違和感なく再生できます。現在では、GSフォーマットに正式対応したGSモードを備えるXG音源モジュールも存在します。

XG対応製品

XGフォーマットは、多くの音源モジュール、シンセサイザー、MIDIキーボード、電子オルガン、電子ピアノ、MIDIプレーヤー、シーケンサー、音源ボード、サウンドLSI、ソフトウェア音源に採用されています。

音源モジュール

MUシリーズ（MU5を除く）
KORG NX5R
EDIROL SDシリーズ（SD-50を除く、XGlite対応）

シンセサイザー

SDX3000
SHK-1000、SHK-1000II
SKB-J700(XGlite)
QS300
CS1x、CS2x
S03BL、S03SL、S08
EOS B900、B900EX, B2000, B2000W, BX

音源内蔵MIDIキーボード

CBX-K1XG、CBX-K1XGB、CBX-K1XGs

電子オルガン

SE-8000、SE-7000、SE-7000II、SE-4000、SE-3000
エレクトーン

電子ピアノ

P-250、CP300、SEP-3000(XGlite)
クラビノーバ
ローランドピアノ・デジタル

MIDIプレーヤー

MDP30、MDP30S (GS,GM2対応)
MDP20XG
MDP10、MDP10S
MDP5 (GS,GM2対応)
EMR1
Roland MT-90U (XGlite)

音源内蔵シーケンサー

QY70、QY100、QY700

音源ボード

DB50XG, DB51XG, DB60XG, SW60XG
WAVEFORCE 192XG, 192XG PLUS, 192digital
SW1000XG, SW1000XG/P
PCC10XG
PLG100-XG

サウンドLSI

YMF724、YMF744、YMF754(DS-XG)

ソフトウェア音源

S-YG20
S-YXG50
S-YXG100plus
MidRadio Player

その他

サイレントアンサンブルピアノ
ドリームキャスト（XGlite対応）

XG対応音源の変遷

XGフォーマット制定前

1993年、ヤマハはGMとGSに対応した音源モジュールTG300を発売。しかし、価格設定などの理由でヒットせず、後継機MU80の開発時に、ライバル機として認知されていたGSではなく、独自の規格「XG」を制定することになりました。これにより、他社製品との差別化を図るとともに、ローランドのOEMに依存せずにヤマハ独自の音源技術を追求することが可能になりました。この際、GS互換のTG300-Bモードも残されました。

MU80・MU5の登場

1994年末、XG対応音源第1号としてMU80が発売されました。32パート、64音同時発音というハイスペックモデルでしたが、当初はXGのベーシックモデルなのか、ハイエンドモデルなのか不明確な状況でした。ベーシックモデルとしてMU5が発売されましたが、こちらはGMのみの対応でした。

MU50の登場

1995年、MU50が発売されました。MU80をハイエンド、MU50をベーシックという位置づけでしたが、ディスクオーケストラモードの関係で、音色数やエフェクトでMU80を上回る部分もありました。

MU50互換機の登場

1995年から1996年にかけて、ヤマハはワークステーションタイプのシンセサイザーQS300、音源内蔵キーボードCBX-K1XG、ドーターボード音源DB50XGなど、MU50互換機を多数発売しました。デモソングやカラオケデータもMU50準拠とすることで、MU50を標準機化しようとしました。

XG音源の拡張機能の提唱

1996年、物理モデル音源VL70-mやピアノサウンド音源P50-mをMU80/MU50と組み合わせる方法を提案しましたが、音源1台完結の利用方法に慣れていたユーザーには受け入れられませんでした。

MU90の登場

1996年末、MU80の欠点を補完したMU90が発売されました。エフェクト面が強化され、ダンス系のサウンドも追加されました。しかし、すぐに上位機種MU100Rが発表されたため、MU90への買い替えは進みませんでした。

MU100の登場

1997年夏、MU100が発売されました。基本音色を一新し、拡張ボードで物理モデル音源やフォルマント・シンギング音源を追加できる画期的なモデルでした。同時期のGS音源SC-88Proとの間で激しいシェア争いが繰り広げられました。MU100は拡張ボードを追加できるMU100Rと共に人気機種となりました。MU90はベーシックモデルとして位置づけられましたが、実際にはMU100が第2世代の標準機となりました。

MU128の登場

1998年初頭、MU100の廉価版MU100Bが発売され、同年7月にはMU100Rを超えるハイエンドモデルMU128が登場。MU100がXGのベーシックモデルとなり、MU90はディスコンとなりました。同時に、XGフォーマットに対応したサウンドLSI YMF724が発表され、一般層にも普及しました。

MU2000・MU1000・MU500の登場

1999年末から2000年にかけて、MU128を改良したMU2000、サンプリング機能を省略したMU1000、MU1000からディスプレイなどを省略したMU500が発売されました。この時期にMU100シリーズはディスコンとなり、MU2000がハイエンドモデル、MU500がベーシックモデルという第3世代に移行しました。

Hello!Music!Audioの登場とその後

2000年以降、同梱シーケンスソフトをSOLに変更し、MU2000 Extended Edition、MU500とUSBオーディオインターフェイスUW500を同梱したパッケージ『Hello!Music!Audio』が発売されました。しかし、MU500以降はMUシリーズの新製品は発表されていません。プロユースではMOTIFシリーズが主流となり、DTMからDAWへと移行する時代の流れとともに、ヤマハのXG専用ホームページも閉鎖されました。XG対応機種は2001年以降も発売されましたが、90年代後半ほどの勢いはありませんでした。2008年には『Hello!Music!』シリーズも終了し、音楽制作用途でのXG音源搭載機種はMU500を残すのみとなりました。

XG Editor

XG Editorは、XG音源の各種パラメータをPC上で操作するためのエディターです。ヤマハ製DAWソフトのXGworksシリーズやSOLシリーズに搭載されており、過去にXG音源方式を搭載した様々な機種に対応しています。2008年9月には、Cubaseシリーズ対応版「XG Editor for Cubase」が公開されました。

脚注

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ヤマハ・MUシリーズ
ヤマハ・CBXシリーズ
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XGworks

外部リンク

YAMAHA : XG Creation Without Limitation - XGフォーマットの仕様書が閲覧できる

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