ヤミ起債

ヤミ起債（ヤミきさい）とは

ヤミ起債は、地方自治体が長期の償還期限を設定した借り入れ契約を、総務大臣や都道府県知事の許可を受けずに行うことを指します。この手法は、正式な手続きを経ることなく資金を調達できるため、財政的に厳しい自治体にとって一見魅力的ですが、潜在的なリスクが伴います。

日本の地方債制度の変遷

日本においては、2006年3月まで、地方債の発行には厳しい許可制度が存在していました。この期間中は、地方財政法に基づき、すべての地方債発行には総務大臣や都道府県知事の承認が必要でした。しかし、2006年4月からは、財政が厳しい自治体を除いて、地方自治体が自らの判断で債務を発行できる「地方債協議制度」へと移行しました。この制度は、国と地方自治体間での事前協議の上で成立します。

ヤミ起債のメカニズム

ヤミ起債は、短期間に少額の借入れを行う緊急措置に基づいていることが多いです。特に、税収が一時的に不足する際や、会計年度末に財政が逼迫する場合に、多くの地方自治体が一時借入金の形で資金を調達するケースが増えています。このような一時的な手段が、他の金融機関との資金のやり取りを通じて、長期的な借り入れに発展することがあります。

これにより、地方自治体は許可が必要な地方債の発行を回避し、事実上、継続的に借入れを続けることができます。しかし、この手法を常用すると、地方自治体は「自転車操業」と呼ばれる危険な状態に陥ってしまうことがあります。すなわち、借金を返済するために新たな借入れを行うという悪循環に陥るのです。

さらに、ヤミ起債は、会計年度末に一時借入金として精算されるため、実質公債費比率には直接影響を及ぼさない特性があります。この点が、外部から財政状況を正確に把握することを難しくしており、自治体の財政健全性を見極める上で大きな課題となっています。

事例

ヤミ起債が特に注目を集めたのは、2006年に夕張市が財政再建団体に指定された際のことです。夕張市は、長期間にわたりヤミ起債を行っていたことが広く報道され、この問題が一般の人々にも知られるようになりました。この事例は、ヤミ起債が自治体財政に与える影響を象徴するものとして、多くのメディアや専門家に取り上げられています。

関連項目

• - 起債: 借入れを行うこと
• - 債務: 借金や負債のこと
• - 地方財政法: 地方自治体の財政に関する法律
• - 粉飾決算: 財務状況を偽って表示すること
• - 損失補償 (財政援助): 財政的な支援を行うこと

ヤミ起債は、自治体が抱える財政問題の一端を映し出し、その影響を真剣に考える必要があります。適切な財政運営と透明性が求められる中で、地方自治体の健全な財政運営が今後ますます重要になるでしょう。

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