ヤリキレナイ川

北海道のユニークな河川「ヤリキレナイ川」

北海道夕張郡由仁町に位置するヤリキレナイ川は、石狩川水系に属する夕張川の支流であり、一級河川として指定されています。全長はおよそ5キロメートルと比較的短い河川ですが、その特異な名称から広く知られています。地元を走る北海道道694号北長沼由仁線沿いを流れています。

名称の謎とその由来

「ヤリキレナイ川」という和名からは想像しがたい、その語源にはいくつかの説があります。一つには、アイヌ語で「魚が棲んでいない川」を意味する「ヤンケ・ナイ」が転訛したという説。もう一つには、「片方だけ、あるいは途中で途切れたような川」を示す「イヤル・キナイ」に由来するという説があります。これらのアイヌ語由来説が、現在の名称の基礎となったと考えられています。

しかし、現在の「ヤリキレナイ」という言葉が直接的に使われるようになった背景には、かつての河川の性質が深く関わっています。19世紀後半から20世紀初頭にかけて、この川はしばしば氾濫を起こし、流域に被害をもたらしていました。これに困り果てた和人の入植者たちが、その制御の困難さから、この川を「やりきれない川」と通称するようになったと言われています。

この通称が正式な河川名称として定着したのは、20世紀の中頃になってからです。特に決定的な契機となったのは、1966年の大雨による大規模な氾濫でした。この災害からの復旧にあたり、補助金の申請書類を作成する必要が生じました。当時の担当職員が、川の正式名称を示す際に、通称として広く用いられていた「ヤリキレナイ川」と記載したことが発端となり、この呼称が公的な記録に登場し、急速に定着していきました。1965年頃の公文書には、既に一級河川としてこの名称が記されていたという記録もあります。

治水への取り組み

過去に度重なる氾濫を引き起こしてきたヤリキレナイ川ですが、現在では治水対策が進められています。2001年からは、夕張川との合流点から上流に向かって約2.1キロメートルの区間において、河道の掘削による川幅の拡張工事が行われています。これにより、増水時の流水能力を高め、氾濫のリスクを軽減するための取り組みが進められています。

メディアでの注目

「ヤリキレナイ川」というその非常にユニークで印象的な名称は、多くのテレビ番組やメディアの注目を集め、度々紹介されてきました。

クイズダービー: 過去に三択問題としてその存在が出題され、視聴者の関心を集めました。
探偵!ナイトスクープ: 2002年1月11日の放送では、探偵の桂小枝氏が「ヤリキレナイ川は何がヤリキレナイのか？」というテーマで調査を行い、名称の由来や背景に迫りました。
トリビアの泉: 2003年1月6日の放送で「北海道にはヤリキレナイ川という川がある」というトリビアが紹介され、107へぇという高い評価を獲得しました。この際、40年前にはザリガニが生息していたものの、放送当時には生物がほとんど見られなくなったことや、公文書に初めて登場した時期なども補足情報として紹介されています。
ヤリキレナイ川 (テレビ番組): 2009年には、この名称を冠したバラエティ番組がTBSテレビで放送されました。視聴者から「やりきれない」エピソードを募集・紹介するという内容でした。
藤岡みなみのおささらナイト: ラジオ番組内で「ヤリキレナイ川に流してすっきりしよう」というリスナーエピソード紹介コーナーがありましたが、後に名称の重複を避けるため「北海道の川（仮称）」と変更されました。
水曜どうでしょう: 2019年には、番組公式Twitterアカウントがヤリキレナイ川の看板前で落ち込むマスコットキャラクターの画像を投稿し、話題となりました。
* その他にも、投稿!特ホウ王国や笑いの金メダルといったバラエティ番組でも紹介されたことがあります。

これらのメディア露出により、ヤリキレナイ川は単なる地方の河川としてだけでなく、そのユニークな名称にまつわるエピソードや歴史、そして現代の治水対策に至るまで、多くの人々に知られる存在となっています。

由仁町では、ヤリキレナイ川に関する情報をウェブサイトで公開しており、その名称の由来や地域の歴史に触れることができます。

もう一度検索