ヤンキー・ドゥードゥル・ダンディ

映画『ヤンキー・ドゥードゥル・ダンディ』：アメリカの心を歌い上げた男の物語

1942年に公開されたアメリカ映画『ヤンキー・ドゥードゥル・ダンディ』は、「ブロードウェイの父」と称されるジョージ・M・コーハンの生涯を描いたミュージカル伝記映画です。劇作家、作曲家、作詞家、俳優、歌手、ダンサーとして多才な才能を発揮したコーハンの人生は、激動の時代のアメリカと深く結びついています。愛国的な歌や、第一次世界大戦中に作られた軍歌『オーヴァー・ゼア』は、当時の人々の心を強く揺さぶり、今もなお歌い継がれています。

キャスティングと製作の裏側

当初、コーハン役はフレッド・アステアに打診されましたが、アステアが断ったため、ジェームズ・キャグニーが主演を務めることになりました。キャグニーは、この作品でアカデミー主演男優賞を受賞し、その演技力が高く評価されました。共演には、ジョーン・レスリー、ウォルター・ヒューストン、リチャード・ウォーフらが名を連ね、監督はマイケル・カーティスが担当しました。製作はワーナー・ブラザースが行い、第二次世界大戦中、アメリカの戦意高揚を目的とした映画として大きな影響を与えました。撮影中に真珠湾攻撃が起こり、太平洋戦争が勃発したことで、映画の内容にもその要素が組み込まれることになりました。

ストーリー：舞台に生きた男の情熱と苦悩

物語は、芸人一家の息子として生まれたジョージ・M・コーハンが、幼い頃から巡業に加わり、役者としての才能を開花させていく場面から始まります。自身の才能に自信を持っていたコーハンは、興行主たちとの衝突を繰り返しながらも、自ら脚本や歌詞を書き、売り込みを行います。脚本家のサム・ハリスと協力し、処女作を大ヒットさせたコーハンは、両親と妹を自分の舞台に出演させ、「コーハン4人組」として演劇界のスターに上り詰めます。コーハンは、愛国心をテーマにした作品を多く手掛け、第一次世界大戦では『オーヴァー・ゼア』を作曲し、アメリカ国民の戦意を高めました。

しかし、妹や両親の死、長年連れ添ったハリスとのコンビ解消など、人生の転機が訪れ、演劇界を引退します。引退後、農場で静かに暮らすコーハンは、自分の名前が忘れ去られていることに気づきます。そんな中、ハリスから新作への出演依頼が舞い込み、コーハンは再び舞台に立ち、フランクリン・ルーズベルト役を演じ、観客から大きな喝采を浴びます。舞台初日後、ルーズベルト大統領からホワイトハウスへの招待を受け、そこで、長年の功績を称えられ、議会名誉黄金勲章を授与されます。

ホワイトハウスを後にしたコーハンは、街で行進する兵士たちが『オーヴァー・ゼア』を歌っている場面に出くわします。行進に加わるコーハンに、一人の兵士が「この有名な歌を知らないのか」と尋ねます。コーハンは笑顔になり、兵士たちと一緒に歌い出すのでした。このラストシーンは、アメリカの愛国心と、コーハンの音楽が世代を超えて受け継がれていることを象徴的に示しています。

受賞歴と映画史における評価

『ヤンキー・ドゥードゥル・ダンディ』は、1942年のアカデミー賞で主演男優賞（ジェームズ・キャグニー）、ミュージカル映画音楽賞、録音賞の三部門を受賞しました。さらに、1993年にはアメリカ国立フィルム登録簿に登録され、1998年にはアメリカン・フィルム・インスティチュートが選ぶアメリカ映画ベスト100の100位にランクインするなど、映画史における重要な作品として高く評価されています。

キャスト

ジョージ・M・コーハン：ジェームズ・キャグニー
メアリー（ジョージの妻）：ジョーン・レスリー
ジェリー・コーハン（ジョージの父）：ウォルター・ヒューストン
サム・ハリス：リチャード・ウォーフ
フェイ・テンプルトン：アイリーン・マニング
ディーツ：ジョージ・トビアス
ネリー・コーハン（ジョージの母）：ローズマリー・デ・キャンプ
ジョジー・コーハン（ジョージの妹）：ジーン・キャグニー

スタッフ

監督：マイケル・カーティス
作詞・作曲：ジョージ・M・コーハン、レイ・ハインドルフ、ハインツ・ロームヘルド
製作：ジャック・L・ワーナー、ハル・B・ウォリス
脚本：ロバート・バックナー、エドモンド・ジョセフ、ジュリアス・J・エプスタイン、フィリップ・G・エプスタイン
原案：ロバート・バックナー
撮影：ジェームズ・ウォン・ハウ

まとめ

『ヤンキー・ドゥードゥル・ダンディ』は、ジョージ・M・コーハンの波乱に満ちた生涯を通して、アメリカの愛国心や不屈の精神を描いた名作です。ジェームズ・キャグニーの熱演と、時代を彩った数々の音楽は、今もなお多くの人々の心を魅了し続けています。この映画は、単なる伝記映画を超え、アメリカの文化と歴史を体現する作品として、後世に語り継がれるでしょう。

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