ヤンク (雑誌)

『ヤンク』(Yank, the Army Weekly) について

『ヤンク』は、第二次世界大戦中にアメリカ軍が発行していた週刊誌です。兵士自身が記事を執筆し、戦時下のアメリカ軍の動向や兵士たちの生活、意見などを伝えていました。発行部数はピーク時には250万部を超え、アメリカ軍の兵士たちにとって重要な情報源であり、心の支えでもありました。

歴史

『ヤンク』の発案者は、第一次世界大戦中に『星条旗新聞』で働いた経験を持つエグバート・ホワイトでした。彼は1942年初めに陸軍に雑誌刊行を提案し、中佐に任官。ホワイトが全般的な指揮を執り、フランクリン・S・フォースバーグ少佐が経営面を担当、ハーツェル・スペンス少佐が初代編集人となりました。しかし、記事内容に関する見解の相違からホワイトはスタッフから外れ、スペンスも異動となり、その後、ジョー・マッカーシーが編集長に就任しました。

創刊号は1942年6月17日発行。当初は海外に派遣されたアメリカ陸軍の兵士のみが入手可能でしたが、同年7月15日からはアメリカ国内の軍人も入手できるようになりました。ただし、一般の書店などで販売されることはありませんでした。発行部数は41か国21版を合わせて250万部以上に達しました。最終号は1945年12月28日に発行され、マッカーシーは編集オフィスが閉鎖されるまで編集長の職を務めました。

特徴

『ヤンク』の特徴は、下士官以下の兵士たちが記事の多くを執筆していた点です。一部の記事は将校も執筆しましたが、兵士たちの視点や意見が率直に反映されている点が魅力でした。また、戦争という過酷な状況下における兵士たちの日常や感情を伝える記事は、多くの読者の共感を呼びました。

トリミンガム書簡

1944年4月25日号には、黒人兵士であるルパート・トリミンガム伍長からの手紙が掲載されました。その内容は、ドイツ人捕虜の方がアメリカ軍の黒人兵士よりも丁重に扱われているというもので、大きな反響を呼びました。7月25日号に掲載された続報によると、トリミンガム伍長の主張を支持する287通の手紙が寄せられ、そのうち183通は白人からのものでした。この書簡は、兵士たちの間で大きな議論を呼び、人種差別問題に対する意識を高めるきっかけとなりました。

画家や写真家たち

『ヤンク』には、多くの画家や写真家も参加していました。ロバート・グリーンホール、ヴィクター・カリン、ハワード・ブロディなどのスケッチ画家、デイヴ・ブレガーによる漫画「G.I. Joe」、ジョージ・ベイカー軍曹の「Sad Sack」などが掲載されました。また、「ファミリー・サーカス」で知られるビル・キーンの漫画作品や、画家で著作家のジャック・コギンスもイラストや記事を寄稿しました。写真家のジョン・ブシェミは、太平洋戦争の写真を数多く撮影し、『ヤンク』の表紙を飾りました。

復刊

2014年、テキサス州フォート・ブリスに駐屯する第1機甲師団の第1ストライカー装甲車旅団戦闘団が、公式出版物として『ヤンク』を復活させました。復刻版の表紙では、旅団の兵士たちがオリジナルの表紙写真を再現し、その歴史を継承する姿勢を示しました。


『ヤンク』は、第二次世界大戦という激動の時代を兵士たちの視点から記録した貴重な資料であり、当時のアメリカ軍の状況や兵士たちの感情を知る上で重要な情報源です。また、多くの画家や写真家が参加したことからも、当時の文化を知る上でも価値のある資料と言えるでしょう。

脚注

外部リンク
“The Art of Yank Magazine: The World War Two Drawings of Robert Greenhalgh” Brown University Library, Special Collections.
“Yank” (Cover, February 20, 1944 issue, British edition) National Museum of American History.
“Army: Yank Magazine – All Editions” Wartime Press.
* Yank archives, UNZ.org

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