ヤン・プロフォースト

ヤン・プロフォースト（またはジャン・プロヴォー）は、15世紀後半から16世紀初頭にかけてフランドルで活躍した画家です。彼は1465年頃に、現在のベルギーのモンスで生まれました。父親も同名の画家であり、幼少期から美術の道に進みました。

プロフォーストは、まず父親から絵画の基礎を学び、その後ヴァランシエンヌに移り、当時著名な画家であったシモン・マルミオンに師事しました。マルミオンは15世紀後半のフランドル絵画を代表する一人であり、プロフォーストの画風に大きな影響を与えました。マルミオンの工房で、プロフォーストは技術を磨き、画家としてのキャリアをスタートさせました。

1489年にマルミオンが亡くなると、その3年後にプロフォーストはマルミオンの未亡人と結婚しました。この結婚を機に、1489年にプロフォーストはブルッヘに移住しました。ブルッヘは当時、フランドル地方における経済と文化の中心地であり、多くの芸術家が活動していました。1494年にプロフォーストはブルッヘの市民権を取得し、画家も加入する必要があった彫刻家・馬具職人組合に加入しました。1519年には、ブルッヘの組合の長に選出されています。

1520年には、ローマ王の戴冠式に向かう途中のカール5世がブルッヘに入城した際、その式典の装飾を担当しました。この仕事はプロフォーストの評判をさらに高め、その後の活躍に繋がりました。また、プロフォーストはアントウェルペンにも工房を開き、この地でアルブレヒト・デューラーと知り合いました。デューラーは1521年にブルッヘのプロフォーストの邸宅を訪れており、当時の芸術家間の交流を示す貴重な証拠となっています。

1525年には、ブルッヘ市役所のために「最後の審判」を描きました。この作品は、プロフォーストの代表作の一つであり、彼の宗教的なテーマに対する深い理解と卓越した描写力が示されています。プロフォーストは1529年にブルッヘで亡くなりました。彼の作品は、現在も美術史における重要な位置を占めています。

プロフォーストの作品は、宗教的なテーマを描いたものが多く、特に祭壇画や聖母子像にその才能が発揮されています。彼の作品には、フランドル絵画の伝統を受け継ぎつつ、独自の繊細な表現と色彩感覚が見られます。また、肖像画にも優れており、当時のブルッヘの有力者や宗教関係者の姿を生き生きと捉えています。

彼の作品は、以下の美術館や教会などで見ることができます。

ルーブル美術館
ベルリン美術館
ロンドン・ナショナル・ギャラリー
ブルッヘ市立美術館
聖血礼拝堂（ブルッヘ）

プロフォーストは、フランドル絵画の黄金時代を代表する画家の一人として、後世に大きな影響を与えました。彼の作品は、美術史の研究において重要な資料であり、現在も多くの人々に鑑賞され続けています。

参考文献
Cornelia Knust: Vorbild der Gerechtigkeit. Jan Provosts Gerichtsbild in Brügge mit einem Katalog seiner Werke. Göttingen: Vandenhoeck & Ruprecht 2007, ISBN 978-3-525-47907-0.

もう一度検索