ヤン・レッツェル

ヤン・レッツェル

ヤン・レッツェル（1880年4月9日 - 1925年12月26日）は、明治末期から大正時代にかけて日本で活動したチェコ出身の建築家です。特に広島県の物産陳列館（現在は原爆ドーム）を設計したことで知られています。

生い立ちと教育

レッツェルはオーストリア・ハンガリー帝国のボヘミアに生まれ、父親が経営していたホテルの影響で早くから建築に興味を持ちました。高等専門学校で建築を学んだ後、プラハの美術専門学校で教授ヤン・コチェラの下で近代建築の基礎を学びました。彼は芸術と建築の交差点であるアール・ヌーヴォーの影響も受けながら、シンプルかつ洗練された設計スタイルを培っていきました。

日本での活動

レッツェルは1907年に来日し、横浜で設計事務所に勤務を始めました。彼の才能はすぐに評価され、数々のプロジェクトに携わることになります。1908年には新たに設立された事務所の東京支店でマネージャーを務めるようになり、友人と共に独立して自身の事務所を開くことに成功しました。

1910年代には、松島パークホテルや広島県物産陳列館など、多くの重要な建物の設計に関与しました。この時期、彼の名声は高まり、特に原爆ドームはその後、歴史的な意義を持つ建物として世界中で知られることになります。

戦争とその後

第一次世界大戦の開戦により、レッツェルは不景気に見舞われ、1915年には事務所を閉鎖せざるを得なくなります。戦後のシベリアに取り残されたチェコ兵の帰国支援を行った後、1918年にはチェコスロバキアの商務官に任命され、在日大使館に勤務しました。しかし、1923年の関東大震災では住宅や多くの建物を失い、失意の中でプラハへ帰国を余儀なくされます。帰国後は健康を害し、1925年に45歳で亡くなりました。

遺産と評価

レッツェルの建築作品は、日本が戦争や震災で多くを失ったため、現存するものはほとんどありませんが、彼の設計した広島県物産陳列館は現在も原爆ドームとして記憶されています。母国チェコにおいては、れっきとした建築家としての評価は長らくなされてこなかったものの、近年になってその実績が再認識されています。1990年代からは彼の名前が注目され、記念行事も開催されるようになりました。

まとめ

ヤン・レッツェルは、建築家としての人生を日本で全うした数少ないチェコ人の一人です。彼の作品を通じて、当時の日本とチェコの文化的つながりを感じることができ、後世への貴重な遺産を残しました。

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