松島パークホテル

松島パークホテルの歴史と概要

松島パークホテルは、かつて宮城県宮城郡松島町に存在したホテルです。日本三景の一つである松島の象徴として、大正時代から約半世紀にわたり多くの人々に愛されました。このホテルは、外国人観光客の誘致を視野に入れ、1913年（大正2年）に開業しました。

ホテルの誕生と初期

1909年（明治42年）、宮城県は松島を観光地として整備する計画を立て、その一環として宿泊施設である松島パークホテルの建設が決定しました。ホテルの設計は、チェコ人建築家ヤン・レッツェルが担当しました。彼は、和風の要素を取り入れつつ、内部は洋風に仕上げるという、当時としては革新的なデザインを施しました。建設費は約4万7千円でした。

運営は、東京の築地精養軒や上野精養軒を経営する北村重昌が担当しました。当初は中央資本に経営を委託することへの反対意見もありましたが、地元の旅館主たちは「松島に立派な設備ができることは喜ばしい」と賛同しました。その後、1930年には精養軒幹部の五百木竹四郎が経営権を譲り受けました。

戦中と戦後の変遷

太平洋戦争中の1945年（昭和20年）には、日本海軍の海軍工廠第三会議所として使用され、一般営業は休止されました。終戦後には、進駐軍であるアメリカ軍の第11空挺師団に接収され、司令官らの宿舎として利用されました。アメリカ軍による改装も行われましたが、1952年（昭和27年）に返還されると、仙都国際観光株式会社が経営を引き継ぎました。1955年（昭和30年）には、昭和天皇と香淳皇后が宿泊されています。

ホテルと周辺施設

松島パークホテルの周囲には、松島水族館や松島ニューパークホテル跡地に新設された動物園などがあり、松島観光の中心地として賑わいました。しかし、1969年（昭和44年）に火災が発生し、建物の一部が焼失したため、ホテルは解体されることとなりました。隣接していた動物園も閉鎖され、動物たちは仙台市八木山動物公園に移されました。ホテルの跡地は現在、松島海岸グリーン広場として整備されています。

設計者ヤン・レッツェル

松島パークホテルの設計を手がけたヤン・レッツェルは、チェコ出身の建築家です。彼は、ホテルの外観を周囲の景観と調和させるために和風にしましたが、内部は純洋風でまとめました。この和洋折衷のデザインは、当時の日本では非常に斬新でした。中央に塔屋を配し、両翼がL字型に伸びる構造が特徴的で、建坪は約120坪でした。外観には入母屋造の屋根や唐草彫り、鳳凰をあしらった懸魚など、寺社建築の様式も見られました。内部は、楕円形のホールを中心に、応接室、食堂、図書室、玉突場、酒場などが配置され、2階は寝室として利用されました。

松島パークホテルが舞台となった作品

松島パークホテルは、映画の舞台としても利用されました。1958年（昭和33年）の松竹映画『モダン道中その恋待ったなし』では、ホテルが現存していた頃の姿を見ることができます。また、ホテルで発生した殺人事件を元にした1961年（昭和36年）公開の映画『警視庁物語 12人の刑事』も存在します。さらに、昭和30年代後半には、テレビで事件のドキュメンタリー番組も放送されました。

松島ニューパークホテル

松島パークホテルの南隣には、同じく外国人観光客向けのホテルである松島ニューパークホテルがありました。基本設計は高橋貞太郎、実施設計は吉田五十八が担当しました。1940年（昭和15年）に開催予定だった東京オリンピックに向け、国策ホテルとして建設されましたが、開業から半年も経たない1940年（昭和15年）1月22日に失火により焼失しました。跡地は遊園地や動物園として利用されました。

松島パークホテル