ユウレイツノテッポウエビ

ユウレイツノテッポウエビ（学名：Synalpheus regalis）は、十脚目テッポウエビ科に属する甲殻類の一種です。主に熱帯の西大西洋域にあるサンゴ礁の環境で見られ、特定のカイメン類の中に集団で生息しています。

このエビの大きな特徴の一つは、そのユニークな体色です。体全体は半透明の明るいオレンジ色をしていますが、食物を捕らえるための大きなハサミである鉗脚（かんきゃく）の先端部分は、より鮮やかなオレンジ色をしています。また、繁殖期のメスに見られる卵巣や、発達中の胚は、淡い緑色をしており、体の他の部分との色彩の対比が見られます。体の大きさについては、産卵期のメス成体がおおよそ2.6ミリメートルから3.7ミリメートル程度になるのに対し、オス成体や幼体は約2.8ミリメートルと、オスや幼体の間で体長に顕著な差は認められません。メスは卵巣の存在によってオスと区別することが可能ですが、オス成体と幼体は外見だけでは見分けがつきにくいとされています。

ユウレイツノテッポウエビの生態で特筆すべきは、昆虫や哺乳類の一部に見られる「真社会性」という、生物社会の最も進んだ形態を示すことです。一つのコロニー（集団）には、繁殖を専門に行う「女王」と呼ばれるメスが原則として一匹だけ存在します。コロニー内の他の個体は、この女王や若い世代の世話、外部からの捕食者に対する防御、そして食料の確保といった、様々な役割を分担して行います。興味深いことに、このエビの幼生は卵から孵化した時点で既に親とほぼ同じ姿をしており、特別な幼生期を経ることなく、コロニーのメンバーとしての生活を始めます。

彼らの生活は、特定のカイメン類と深く結びついています。ユウレイツノテッポウエビは一生の大半をカイメンの内部空間で過ごし、ここを安全な隠れ家や食料を得る場として利用しています。彼らがカイメン内に他の生物を寄せ付けない行動をとることから、生息環境における競争が激しいことが示唆されます。食性としては、カイメンに付着したデトリタス（死んだ有機物）や他の生物の排泄物などを食べるスカベンジャー（清掃動物）として機能しています。コロニーの規模は時に300匹を超えることもありますが、その中で繁殖能力を持つのはただ一匹の女王のみです。繁殖に携わらない個体たちは、主に外敵の侵入からコロニー全体を守る役割を担っています。

学名の小種名である「regalis」は、ラテン語で「王室の、高貴な」といった意味を持つ言葉に由来しており、これはおそらく、コロニーを統率する女王の存在や、彼らの示す真社会性という高度な社会構造にちなんで名付けられたと考えられます。

このように、ユウレイツノテッポウエビは独特な社会構造を持つ興味深い生物ですが、その生態の全貌については、まだ多くの謎が残されており、今後の研究によるさらなる解明が期待されています。

もう一度検索