ユグルタ

ユグルタ：ヌミディア王、共和政ローマを揺るがした男

ユグルタ（紀元前160年 - 紀元前104年）は、紀元前2世紀のヌミディア王であり、共和政ローマとの間でユグルタ戦争を引き起こしたことで知られています。彼の生涯は、ヌミディア王国の興亡と、当時のローマ共和政の内情を映し出す鏡と言えるでしょう。

生い立ちと出自

ヌミディアは、北アフリカに位置する王国で、ユグルタの祖父マシニッサは、第二次ポエニ戦争でローマに協力し、カルタゴを打ち破ることに貢献しました。これにより、ヌミディアは北アフリカにおける有力な勢力として台頭します。

ユグルタは、マシニッサの息子マスタナバルを父として、キルタで生まれました。マシニッサの死後、王位は長男ミキプサが継承しますが、ユグルタはその才能と人望からミキプサに養子として迎えられます。

しかし、ミキプサはユグルタを警戒し、彼をヌマンティア戦争に従軍させるためヒスパニアへ送ります。ヒスパニアでの従軍中、ユグルタはスキピオ・アエミリアヌスの下で武勇を磨き、ガイウス・マリウスとも親交を深めます。また、この時期にローマ軍の腐敗ぶりを目の当たりにし、後の戦争でこれを巧みに利用することになります。

王位簒奪

紀元前118年、ミキプサが死去すると、ユグルタはミキプサの息子であるアドヘルバル、ヒエンプサルと共に共同で王位を継承します。しかし、すぐに3人の間で王位を巡る争いが勃発し、ユグルタはヒエンプサルを殺害、アドヘルバルをローマへ追放します。

ローマ元老院は、ヌミディアの内紛に介入し、王国を東西に分割してユグルタとアドヘルバルに統治させることで決着を図ろうとします。しかし、ユグルタはローマの有力者に賄賂を贈り、ヌミディアの豊かな西側を手に入れます。

対ローマ戦争

紀元前112年、ユグルタはアドヘルバルが滞在するキルタを攻撃し、アドヘルバルを殺害、彼を支援したローマ人を虐殺します。これに対し、ローマはユグルタに宣戦布告しますが、ユグルタは巧みな戦術と地の利を生かしてローマ軍を苦戦させます。

執政官ルキウス・カルプルニウス・ベスティアは、ユグルタから賄賂を受け取り、彼に有利な条件で講和を結びます。しかし、この講和はガイウス・メンミウスによって告発され、ベスティアは収賄の疑いでローマへ召喚されます。ユグルタもローマへ赴きますが、従兄弟のマッシウァを暗殺しようとするなど、その策略は止まりません。

紀元前109年、再びローマとの戦争が勃発します。執政官クィントゥス・カエキリウス・メテッルスがヌミディアへ侵攻し、ユグルタはムトゥルの戦いで敗北しますが、ゲリラ戦を展開してローマ軍を翻弄します。この状況下で、ガイウス・マリウスがローマへ帰還し、紀元前107年の執政官選挙に当選、メテッルスに代わってローマ軍の指揮を執ることになります。

マリウスは、ルキウス・コルネリウス・スッラをユグルタの同盟国であったマウレタニアへ派遣し、マウレタニア王ボックス1世の協力を得て、ユグルタを捕縛することに成功します。これにより、ユグルタ戦争は終結します。

処刑とその後

ユグルタはローマへ連行され、タレントゥムに幽閉されます。紀元前104年、マリウスの凱旋式で引き回された後、カルケル・マメルティヌスで処刑されました。彼の死後、ヌミディア王にはユグルタの兄弟ガウダが就任します。

ユグルタの生涯は、ヌミディア王国の独立と、ローマの勢力拡大が衝突する時代の象徴と言えるでしょう。彼の抵抗は、ローマに対する反抗の歴史において、特筆すべき出来事として語り継がれています。

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