ユスティヌス1世

ユスティヌス1世：貧農から皇帝へ

ユスティヌス1世（Justinus I, 450年2月2日 - 527年8月1日）は、東ローマ帝国（ビザンツ帝国）のユスティニアヌス王朝の初代皇帝です。彼の生涯は、貧しい農民から帝国の頂点へと駆け上がった、波乱に満ちたものでした。

生い立ちと軍人としてのキャリア

ユスティヌスは、現在のセルビア共和国ニシュ近郊のベデリアナで生まれました。貧しい農家の出身であった彼は、プラエトリアニ（親衛隊）に入隊し、軍人としての道を歩み始めます。彼は着実に軍歴を重ね、最終的には将軍の地位にまで昇りつめました。解放奴隷出身とされるエウフェミアと結婚し、彼女と共に人生を歩みました。エウフェミアは520年頃に亡くなっています。

皇帝即位

518年、先帝アナスタシウス1世が後継者を指名しないまま亡くなると、元老院は協議の結果、当時68歳であった老将軍ユスティヌスを新たな皇帝として選出しました。ユスティヌスは、甥で養子のユスティニアヌスの大きな助けを得て、新帝に即位しました。ユスティヌスは、軍人としての経験は豊富でしたが、読み書きができなかったため、勅令に署名する際は、側近の手を借りて、くり抜かれた板に沿ってペンを動かす必要がありました。

治世の課題

ユスティヌス帝の治世は、決して平穏なものではありませんでした。帝国は、アンティオキア（シリア）の大地震をはじめとする自然災害に見舞われました。また、対外的にはサーサーン朝ペルシア帝国の侵攻を受けるなど、多くの困難に直面しました。このような状況下で、ユスティヌスは、甥で法学や神学に造詣の深いユスティニアヌスを腹心とし、実質的な国政はユスティニアヌスによって行われました。

ユスティニアヌスとの関係

ユスティニアヌスは、ユスティヌスの姉ウィギランティアの息子で、本名はペトルス・サッバティウスでした。ユスティヌスは、彼を養子とし、ユスティニアヌスという名前を与えました。ユスティニアヌスは、ユスティヌスの後継者として育てられ、帝国の実権を握り、ユスティヌス帝の死後、皇帝ユスティニアヌス1世として即位しました。また、ユスティヌスは、先帝時代に悪化していたローマ教会との関係修復にも尽力しました。

甥の結婚と法制定

525年頃、ユスティヌスの甥であるユスティニアヌスは、踊り子出身のテオドラと結婚しました。当初、身分の違いから結婚は困難でしたが、ユスティヌス帝は、甥のために、異なる階級間の結婚を認める法律を制定しました。

ユスティヌス帝の死とその後

ユスティヌス1世は527年8月1日に亡くなり、彼の死後、皇位は養子であり後継者として育てたユスティニアヌス1世に引き継がれました。

まとめ

ユスティヌス1世は、貧しい農民から皇帝にまで上り詰めた、稀有な人物でした。彼の治世は、多くの困難に満ちていましたが、甥ユスティニアヌスの助けを得て、帝国を統治しました。彼の生涯は、努力と才能があれば、身分に関わらず成功を収めることができるということを示しています。

参考文献

Meier, Mischa. Justinian. Herrschaft, Reich, und Religion. Munich, 2004.
この記述には著作権が消滅したSchaff-Herzog Encyclopedia of Religion本文を含む。

関連項目

* ユスティニアヌス王朝

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